白髪は抜くと増える?ストレスで増える?都市伝説と医師ならではの白髪対策

白髪は抜くと増える?ストレスで増える?都市伝説と医師ならではの白髪対策

イントロダクション

 

気が付けば増えている白髪。抜いても染めても継続的なケアが必要で、「どうにかならないの!」と腹立たしく感じてしまいますよね。髪の色を作る細胞が死んだから白髪になる、抜くと増える、黒ごまを食べると黒くなるといったウソか本当かわからない情報も耳にします。

そこで、本記事では医師たちが、髪の毛を作る細胞のドラマや白髪にまつわる都市伝説を徹底解剖しました。白髪との戦いに疲れている方、これから戦い始める方に向けて、医師ならではの対策も解説。一読の価値アリのボリューミーな対談ですので、ぜひ最後までお目通しください♩

【参加医師の自己紹介】

医師11年目。大学病院で呼吸器外科医として肺がん手術を中心に担当。非常勤で呼吸器内科・一般外来・訪問診療も行う。高齢者や同世代から白髪について質問を受けることが多く、本テーマに関心を持つ。

医師17年目。腎臓内科と一般内科を中心に診療。家族に若白髪の者がいることや、自身の白髪の発見をきっかけに、関心を持つ。一般の方の関心も高いテーマとして臨床に活かしたいと考えている。

医師17年目。クリニックで糖尿病・内分泌疾患を中心に診療。自身の白髪の増加を実感しており、白髪の成因や対策に興味を持って参加。

なぜ白髪ができるのか?白髪が生まれるメカニズム

——なぜ白髪ができるんですか?

白髪になる原因として、髪の色素をつくるメラノサイトや、そのもとになる幹細胞の減少が挙げられます。特にメラノサイト幹細胞(Melanocyte Stem Cell, McSC)が枯渇することで、色がつかなくなるんですね。加齢によって、この幹細胞の機能が失われたり、数が減ってしまうことが主な理由と考えられています。
活性酸素、つまり酸化ストレスも白髪の原因として確実に関与しているようです。紫外線や喫煙などの外的要因で活性酸素が増えると、メラノサイトが直接ダメージを受けてしまうんですね。
さらに最近面白いと思ったのが、McSCの「移動性が加齢で失われる」という研究結果です。若いうちは毛包の中を幹細胞が行き来して働いていますが、年をとるとそれができなくなって、機能しなくなるんです(参考1)。

——ストレスで白髪になることもありますか?

ストレスによって白髪が増えるという話もありますが、実際にマウスの実験で、ストレスが交感神経を活性化し、メラノサイト幹細胞を枯渇させることが確認されています(参考2)。その結果、白髪化が進むわけですね。ノルアドレナリンの放出によってこの現象が起こるそうです。
しまりす先生のお話とあわせて考えると、やはり幹細胞の維持が重要で、その機能を保つことが白髪対策の一つになりそうですね。

なるほど。メラノサイト幹細胞が“そこに存在していても動けない”というのは、確かに加齢による細胞間コミュニケーションの変化ともリンクしていて、非常に興味深いです。
ストレスに関しても、「白髪が急に増えた」なんて話を昔から耳にしますが、あれが単なる迷信ではなく、交感神経が関与する具体的なメカニズムがあるとなると納得ですね。ストレスマネジメントの重要性を改めて感じます。

——何歳頃から白髪が目立つようになるのですか?遺伝的な影響や人種による差もありますか?

体感的には、30代後半くらいから「白髪が気になる」という声をよく聞くようになります。アジア人の場合、30代後半から白髪が目立ち始め、25歳未満で出ると“早発白髪”とされているようです(参考3)。
また、IRF4という遺伝子が白髪の発生に関与することが分かっていて、これがあると白髪が早くから出る傾向があります(参考4)。遺伝的要因も大きいですね。

確かに、「親が若白髪だったから自分も……」と心配される方は多いです。ただ、遺伝はあっても、酸化ストレスを減らす生活習慣やストレス管理など、自分でコントロールできる部分もあります。そこを丁寧に伝えていくことも大切ですね。

本当にそう思います。体質的に白髪が出やすい人もいますが、生活習慣を見直すことで進行を抑えることも可能かもしれません。私も最近白髪を見つけてしまったので、なるべく増やさないようにしたいなと思っています。

なぜ白髪ができるのか?白髪が生まれるメカニズム」まとめ

  • 白髪は主にメラノサイト幹細胞(McSC)の枯渇や機能低下、移動性の消失によって生じる
  • 酸化ストレスやストレスはメラノサイトにダメージを与え、白髪を促進させる
  • IRF4などの遺伝要因が白髪の出現時期に関与しているが、生活習慣の改善やストレス対策で進行を遅らせる可能性がある

「抜くと増えるって本当?大きなストレスにより一晩で白髪になる?」都市伝説を徹底検証

——2つ目のテーマは「白髪を抜くと増えるって本当?」です。よく耳にする噂ではありますが、実際に医学的な根拠はあるのでしょうか。

白髪を抜くと増えるというのは迷信に近いものです。毛包はそれぞれ独立しており、一本の毛を抜いたからといって周囲の毛包に影響が及ぶことはありません。ただし、毛根や頭皮を損傷することで、間接的に周囲の毛髪の状態が悪化することはあります(参考5)。

そうですね。毛包が独立している以上、1本の白髪を抜いたことが他の毛に影響するとは考えにくいです。

——白髪が抜いても増えないなら医学的には抜いても問題はありませんか?

抜く行為自体が炎症や皮膚のトラブルを引き起こすことは確かにあるので注意は必要です。

色素細胞がすでに機能を失っている毛包では、何度抜いてもまた白髪が生えてくるだけです。むしろ繰り返し抜くことで毛包の機能が傷つき、最悪その毛穴から髪が生えてこなくなる可能性すらあります。

——白髪を抜いたせいで薄毛になるのは困ります!抜くのは止めた方がよさそうですね!

では「マリー・アントワネットが一夜で白髪になった」という都市伝説ですが、あり得る話ですか?

医学的にあり得ないですね。

おっしゃる通りです。すでに生えている髪が一晩で白くなることは生理的に不可能です。ただ、強いストレスがメラノサイト幹細胞の働きを妨げて、白髪の進行を早めるという報告はあります(参考6)。

その点はマウスの研究でも示唆されていますよね。ストレスによる白髪化は、昔の人たちが肌感覚で捉えていたことかもしれません。

「カニティーズ・スビタ現象(canities subita)」のように、極度のストレスや自己免疫反応により、黒髪だけが脱落して白髪が一気に目立つというケースもあります。実際に、毛球にPD-L1陽性細胞が発現していたという報告もあります(参考7)。

——一晩で白髪になるといった極端は変化はないけれど、ストレスで白髪が目立つケースはありそうですね。薬の副作用で白髪が生えることはありますか?

免疫チェックポイント阻害薬の副作用として、白髪化や脱毛が報告されています。メラノサイトが自己免疫反応のターゲットになることもあるため、irAE(免疫関連有害事象)の一つとして注意が必要です。

確かに、白髪の進行が薬剤と関係している可能性もありますね。臨床では見落とさないようにしないと。

——このほかにもさまざまな白髪の都市伝説を耳にします!

「シャンプーを変えると白髪が増える」「紫外線を当てると白髪が黒く戻る」「黒ゴマやブルーベリーで白髪が治る」などの話がありますが、これらについてもエビデンスはあるのでしょうか?

調べてみましたが、明確な科学的根拠は見つかりませんでした。白髪染めを使っていた人が通常のシャンプーに戻した場合、白髪が目立つようになるという印象が誤解を生んでいるのかもしれません。

黒ゴマなどに含まれる抗酸化物質は健康には良いかもしれませんが、白髪を黒髪に戻すという効果までは示されていませんね。

たとえば、シャンプーに含まれる界面活性剤が毛幹の損傷や乾燥を引き起こす可能性はありますが、毛球の色素細胞に直接影響を与えるというデータはありません(参考8)。また、酸化染毛剤による毛幹の損傷は知られていますが、メラノサイト機能への影響は証明されていません(参考9)。

結局のところ、都市伝説の多くは科学的根拠に乏しいですが、それだけ多くの人が白髪に対して不安を感じ、対策を探しているということなのかもしれません。

「抜くと増えるって本当?大きなストレスにより一晩で白髪になる?」都市伝説を徹底検証 まとめ

  • 「白髪を抜くと増える」は迷信。毛包は独立しており、影響は及ぼさないが、抜く行為による頭皮・毛根の損傷には注意が必要。
  • 「一夜で白髪になる」という逸話は医学的に否定されるが、自己免疫脱毛やストレスによる白髪化が目立つケースは存在する。
  • シャンプー・食事・紫外線などに関する都市伝説には明確な科学的根拠は乏しく、白髪の予防や改善には今後の研究が期待される。

病気が原因で見られる白髪とは

——病気が原因で白髪が増えることはありますか?

今回調べてみて、意外に多くの疾患が白髪に関連しているとわかりました。代表的なものとしては白斑、そして甲状腺機能低下症亢進症があります。
白斑は自己免疫反応によってメラニン細胞が破壊されるため、皮膚だけでなく頭皮の色素細胞も影響を受け、白髪が目立つことがあります。甲状腺疾患ではホルモンバランスの乱れがメラノサイトに影響を及ぼし、早期の白髪化を引き起こす可能性があります。

確かに甲状腺ホルモンの減少が早期の白髪化を招くことは文献にも記載されています。加えて、ビタミンB12欠乏症も白髪の原因として報告されていますね。
生活習慣面では、喫煙が白髪の発生に関わることが知られています。喫煙は酸化ストレスを増大させ、毛包メラノサイトを傷害します。そのため、禁煙は白髪の予防策の一つとしても有効だと思います(参考10)。

なるほど。甲状腺疾患の患者は、疲れやすさやむくみ、体重変化といった症状で受診されることが多いのですが、白髪を主訴に来る患者は少ないですよね。甲状腺疾患と白髪の関連は意外と知られていない印象です。

もうひとつ興味深い例として、Vogt-小柳-原田病(VKH)があります。この疾患はメラニン色素細胞に対する自己免疫反応でぶどう膜炎を起こすだけでなく、白斑や白髪、脱毛といった症状も併発します。白髪と皮膚症状が同時にみられた場合は、こうした自己免疫疾患を疑うことが大切です。

VKHはぶどう膜炎のイメージが強いですが、白髪の要因としても挙げられるのですね。診察時に白髪と皮膚症状、さらには視力低下などが一緒に見られる場合は、自己免疫性の原因疾患を考える必要があると感じました。
また、先天的な要因として、ワーデンブルグ症候群も知られています。幼少期から特徴的な前髪の白髪がみられ、虹彩異色症感音難聴など他の症状を伴うことがあります(参考11)。問診で家族歴をしっかり聞くことが診断の一助になります。

白髪といえば加齢現象として流されがちですが、こうした病気の兆候として捉えると、問診や診察の視点が広がりますね。これまで白髪と病気の関連をあまり意識したことがなかったので、非常に参考になりました。

同感です。ビタミンB12欠乏や喫煙による酸化ストレスも含め、生活習慣の改善が白髪対策になることも見逃せません。患者から白髪について相談を受けた際には、こうした疾患や栄養状態を一度整理する価値があります。

白髪という一見単純な症状も、内分泌や自己免疫、栄養障害など、幅広い領域にまたがって考える必要がありますね。

本当にその通りです。白髪を主訴にした受診は稀ですが、鑑別に幅を持たせるための知識として非常に重要だと感じました。

今回の議論で、私自身も臨床の新しい視点を得られました。白髪を通じて患者の全身状態を考えるアプローチを、今後も診療に活かしたいと思います。

病気が原因で見られる白髪とは」まとめ

  • 白髪は単なる加齢現象ではなく、内分泌異常、自己免疫疾患、栄養障害、生活習慣の影響が複雑に関与している。
  • 甲状腺疾患やVKHなど、白髪を症状の一つとして考えるべき疾患は多岐にわたる
  • 白髪が皮膚症状や視覚症状と同時に出る場合、医療機関での精査を検討すべきであり、問診・家族歴の重要性が再確認された。



医師の本気討論!日常での対策は?

——では、白髪はどのように対策すればよいですか?

まずは基本的な生活習慣ですね。バランスの良い食事、十分な睡眠、そしてストレスをためないことです。栄養面では鉄・カルシウム・銅などのミネラル不足が関与するという報告があります。ただ、これは明らかな欠乏がある場合に限られる可能性が高く、「不足しないよう心がける」程度で十分だと思います。
それと、紫外線や過度な染髪など、頭皮や髪に負担をかける行為を避けることも重要です。これらはすぐ効果が見えるものではありませんが、日々の積み重ねが大切です。

やはり生活習慣がベースですね。紫外線に関しては、髪だけでなく頭皮も守る必要があるのは意外と知られていない気がします。

——喫煙は白髪を促進しますか?

喫煙が白髪の進行と関係する報告は複数ありますし、禁煙は様々な疾患リスク低下にもつながります。それから、ビタミンB12不足にも注意が必要です。食品成分データベースを見ると、B12が多いのはしろさけ、しじみ、いわのり、あさりなどで、上位10品目は全て魚介類や藻類です(参考12)。日常的にこれらを食事に取り入れることも白髪対策の1つになると思います。

具体的な食品まで挙げてもらえると、患者さんもイメージしやすいですね。禁煙と合わせて、続けられる工夫を提案したいです。ちなみに、お二人は外来で白髪相談を受けた際、何から伝えますか?

喫煙歴があればまず禁煙からですね。「白髪にも影響する」と聞くと、動機づけになる方もいます。そのうえで、生活習慣や食事内容を一緒に確認し、取り組めそうなことを提案します。白髪と甲状腺機能異常の可能性がある場合はホルモン評価も考慮します。

頭皮の健康維持の観点からも紫外線対策は重要です。特にUVAは活性酸素を発生させ、色素を作る細胞に負担をかけます。完全に白髪を防ぐことはできませんが、帽子や日傘の使用で頭皮環境を保てますし、皮膚がん予防や光老化防止にもなります。

お二人のお話で「完璧より続けられる少しずつ」というのがキーワードに感じました。

——疾患が疑われる白髪の特長や受診した方がよい目安はありますか?

以下のような場合は疾患の可能性も考え、受診を勧めたいです。
• 25歳未満で顕著な白髪、または数週〜数か月で急増
• 皮膚の白斑、眉・まつ毛の色抜け、びまん性脱毛
• 強い倦怠感・むくみ・体重変化(甲状腺)
• しびれ・舌炎(B12欠乏)、胃切除歴、厳格ベジタリアン、長期の亜鉛サプリ摂取(銅欠乏の可能性)

確かに、白髪は見た目の問題だけでなく、病気のサインになることもあると知ってもらうことが大事ですね。

医師の本気討論!日常での対策は?」まとめ

  • 白髪は完全に防げないが、生活習慣の改善、禁煙、栄養管理、紫外線対策により進行を遅らせられる可能性がある。
  • 特にビタミンB12、鉄、銅の欠乏を避けるため、魚介類・藻類などを取り入れることが推奨される。
  • 若年発症や急速な進行、他の症状を伴う場合は内科的精査を勧めるべきである。


座談会まとめ

白髪の発生メカニズムと要因:
白髪はメラノサイト幹細胞の枯渇や機能低下、酸化ストレスやストレスによる障害、遺伝的要因が重なって生じる。

都市伝説と科学的根拠:
「抜くと増える」は迷信だが、抜く行為は頭皮に悪影響を与える。食材やシャンプーで白髪が黒く戻る科学的根拠は乏しいが、ストレスや免疫反応で急に目立つ場合はあるが一晩でで白髪になるとは考えにくい

疾患との関連と日常的対策:
甲状腺疾患やビタミンB12欠乏、自己免疫疾患などで白髪が出ることがある。日常的には禁煙、栄養管理、睡眠、紫外線対策で進行を遅らせられる可能性がある。



AIMEDは、このような「気になるけど病院で医師に聞きにくい」「本当のところが知りたい!」という皆様の質問にお答えするメディアです。【医師に調査をリクエスト】から、ご質問をいただきましたら、本記事のように医師が座談会を開催して、皆様のご質問を検討いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

この座談会で参考にした文献リスト

1.『A mechanism for the aging-associated loss of hair pigment』(Nature, 2023)

2.『Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells』(Nature, 2020)

3.『Premature graying of hair』(Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery, 2021)

4.『A genome-wide association scan implicates multiple genes in hair color variation』(Nature Communications, 2016)

5.『Gray hair: From prevention to treatment』(Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 2022)

6.『Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells』(Nature, 2020)

7.『Canities subita after anti–PD-1 therapy』(Case Reports in Dermatological Medicine, 2022)

8.『A review of shampoo: Functions and formulations』(Journal of Pharmacy & Bioallied Sciences, 2023)

9.『Ultraviolet radiation and skin aging: Roles of reactive oxygen species, inflammation and protease activation, and strategies for prevention of inflammation-induced matrix degradation – a review』(International Journal of Cosmetic Science, 2005)

10.『Premature Graying of Hair: Review with Updates』(International Journal of Trichology, 2018)

11.『Waardenburg Syndrome』(National Organization for Rare Disorders)

12.『ビタミンB12含有量ランキング』(文部科学省 食品成分データベース)

監修

江口 瑠衣子 医師

江口 瑠衣子 医師

2009年長崎大学医学部卒業
大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事
患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている
腎臓専門医・総合内科専門医

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