医学部受験・医学生・社会人──段階別に考える医師の勉強法

医学部受験・医学生・社会人──段階別に考える医師の勉強法

イントロダクション

 

医学部受験、医学生時代の試験、そして医師になってからの専門医試験や自己研鑽。
医師のキャリアは、常に「学び」とともにあります。

一方で、その勉強法は一様ではありません。
受験を突破するための戦略、学生生活を乗り切るコツ、仕事や家庭と両立しながら学び続ける工夫 -それぞれの立場やライフステージによって、最適解は大きく異なります。

本座談会では、医学部受験から学生生活、社会人になってからの学びまでをテーマに、異なるバックグラウンドを持つ3名の医師が、自身の経験をもとに語り合いました。

これから医学部を目指す方、医学生、若手医師はもちろん、学び直しや自己研鑽に悩むすべての医療者にとって、自分に合った勉強法を見つけるヒントとなる内容です。

【参加医師の自己紹介】

医師11年目。私立医学部に現役合格し、現在は大学病院で肺がん手術を中心に担当。試験よりも研究や教育活動に強みを持つ。

医師13年目、麻酔科11年目。現役で公立医学部に合格。試験には効率重視のスタイルで臨み、TOEICなど医系以外の試験も経験。最近は体力と集中力の低下を感じており、効率的な勉強法について話し合いたいと参加。

医師11年目。高校卒業後に一浪して地方の国立大学医学部に合格。その後は内科認定医・呼吸器専門医・総合内科専門医を比較的早期に取得。これまでの勉強法を振り返りつつ、子育てとの両立を実現する効率的な方法について座談会を通して学びたく参加。

医学部受験の成功法

——早速ですが、医学部を受験するにあたって、どのような勉強をされていましたか?
皆さんの戦略や学習方法を教えてください。

私は駿台市谷校で言われた通りに勉強していました。高校が受験に積極的ではなかったため、学校はほとんど息抜きの場になっていました。運動部には高2まで所属していましたが、途中でやめました。
私立や他学部は受験せず、センター試験と、公立大学の数・理・英の4教科に絞って対策しました。今は総合型選抜なども増えていますが、当時の医学部受験はとても特殊だった印象です。

私は中高一貫校に通い、高校2年まで音楽系の部活をしていました。高校1年から予備校に通っていて、浪人が決まってからは駿台市谷校で1年間過ごしました。
浪人期は予備校のカリキュラムを中心に、苦手科目を重点的に補強しました。

予備校以外の参考書は、各教科で「これ」と決めた良書をなるべく一冊に絞り、繰り返し取り組むことで理解を深めるスタイルでしたね。多くの問題集に取り組むことにもメリットがあるのですが、一冊を深くやりこむことで得られる応用力の大切さもこのときに学びました。

——受験が近付いた後半はどのようなスタイルで取り組みましたか?

理解よりも暗記に重点をシフトしましたね。英単語や文化系科目、どうしても理解がおいつかない苦手分野などは短期集中の暗記で乗り切る戦略です。

——出願校はどのように決めましたか?

私は当初から医学部に絞っていたこと、そして学費が高くない大学を選ばざるを得なかったという事情もあり、偏差値だけでなく、合格の可能性が高い大学を見極めて出願先を決定しました。
センター試験(現・共通テスト)の得点比率や自分の得意・不得意、偏差値、通学可能な距離なども含めて戦略を立てた結果、前期試験で国立大学に合格することができました。
最終的にはセンター試験(現・共通テスト)の得点配分、通学距離、学費などを考慮し、合格可能性が高い国立大学を選び、前期で合格できました。

お二人とも、予備校や戦略的な学習が中心だったのですね。私は私立医学部に現役合格しましたが、当時は周囲に現役合格者が少なかったので驚かれました。勉強法をかなり工夫した覚えがあります。

——医学部合格を経て気付いたことはありますか?

医学部受験は非常に難易度が高い問題を解くというより、駿台テキストの中~上レベルの問題をしっかり解く力が問われますよね。周りができる人ばかりなので、自信をなくしがちですが、典型問題を確実にこなすことが重要でした。

ときどき訳のわからない異様な問題が出る大学もあるかもしれませんが、私も先生に同感です。90点が取れる分野を磨いても95点くらいまでしか伸びないので伸びしろは少ないですよね。

得意科目に時間をかけすぎるよりも、60点程度しかとれない苦手科目の底上げが全体の得点力向上につながると感じました。また、医学部は「どこに受かるか」より「まず受かること」が最も大事です。偏差値だけでなく、学費や自分に合った大学を選ぶことが成功の鍵だと思います。

——大学生になると塾講師などのバイトで勉強を教える立場になることも多いかと思いますが、その際はどのようなことに重点を置いて指導していましたか?

大学生の頃に2年ほど家庭教師をしていました。生徒は勉強習慣がなく、学校の授業についていくのが難しいタイプだったので、予習・復習といった基礎の定着に重点を置いて指導していました。

私は駿台の個別指導でバイトをしていました。内容はテキストの復習や、文系生徒への数学の指導などでした。難題よりも、同じテーマの基礎問題を何度も繰り返すことを重視していました。ただ、生徒のやる気次第で成果に差が出やすいと感じました。

今、私は早稲田塾で現役医師として受験生向けに話す機会があるのですが、まず「将来どうなりたいか」を一緒に考える時間を作るようにしています。目標がはっきりすると、勉強へのモチベーションも変わってくるんですよね。

——医学部ならではの受験対策を教えていただきました。ポイントを整理します。

医学部受験の成功法」まとめ

  • 医学部受験は、難問に挑む力よりも、基礎的で典型的な問題を確実に解ける力も重要
  • 志望校選びは、偏差値だけでなく、学費・通学環境・共通テストの配点など、自分にとって有利な条件を多面的に分析して決定することが合格の近道

学生時代の勉強法と学んでおきたいこと

——医学部に入学すると、実習や試験だけでなく、部活にバイトと忙しかったと思います。

多忙ななかで勉強を続ける方法やコツを教えてください!

大学生活で大事なのは「流れに乗って、みんなとおなじことをきちんとやること」です。受験までは個人戦でしたが、大学では周囲と同じことを着実にこなすのが近道です。私は部活の先輩から試験対策資料を受け取り、同期とも情報共有しながら進級しました。独力より、うまく流れに乗る方が医学部を乗り切るコツだと思います。

同感です!
過去問や試験情報を得るなら部活やサークルに属するのが有利ですね。コミュニティに入って皆と同じ対策をすることが、留年しない “鉄板” だと思います。
ただ、これからの医師が生き残るには試験合格だけでは不十分です。英語、ビジネス、基礎研究など他分野にも目を向け、自分に合う分野には積極的に学びに行く姿勢が必要です。

——もっと学生時代に勉強をしておけばよかったと思うことはありますか?

私自身、もっと経験を積めばよかったと感じています。

私もそう思います。
私も、もっと学生時代に経験を積んだり、新しいことに挑戦したりしておけばよかったと、今になって思うことが多々あります。

臨床が始まると新しい挑戦の時間が取りにくいので、学生時代に興味のある分野に触れておくべきです。最近は医学生のうちからビジネスや IT、語学に取り組む人が増えています。「勤務医」の枠を超えたキャリアの可能性が広がります。

お二人のようにパラレルキャリアへ挑戦する姿勢は学生の頃から重要ですね。「試験に合格する」だけではなく「興味・キャリアを広げる」視点に切り替える必要があります。視野を広げるための情報収集方法はどうしていますか。

興味を持てることから始めるのが一番です。書籍、インターネット、SNS など多様な手段があります。投資や経済の勉強、語学学習、SNS での情報発信や異職種との交流も刺激になりますし、病院外のアルバイトで社会経験を積むのも有益です。

医療界は閉じた世界になりがちですから、医学部生以外の友人やコミュニティを大事にすることを勧めます。新しい世界を知るきっかけになります。

——医学以内の情報に触れる際に気を付けた方がよいことを教えてください

SNS は情報のスピードが速い反面、切り取られた情報も多いです。実際に会って話を聞くことで得られる一次情報は貴重ですね。AI もネット上の情報の集合体にすぎないので、現場でのリアルを確かめる姿勢が欠かせません。

おっしゃる通りです。
SNS で得た情報を鵜呑みにせず、自分で確かめる癖をつけることが重要です。都合よく編集された情報に流されないよう注意しています。

結局、私たちも医者になってからも日々勉強の連続です。

——入学すると受験生時代とは異なる視点で学ぶ必要がありそうですね!本テーマの重要事項をまとめておきます。

医学生時代の勉強法と学んでおきたいこと」まとめ

  • 大学の定期試験対策で大切なのは「流れに乗る」こと
  • 過去問や対策資料を周囲と共有しながら乗り切る
  • 学生時代こそ医学以外の分野にも挑戦すべき
  • 語学・ビジネス・IT・異業種交流などを通じ、将来のキャリアの選択肢を広げる基盤を構築
  • 視野を広げるために、SNSや書籍といった情報源を活用しつつ、実際に人と会って得られる一次情報を重視

限られた時間を最大限活用する”工夫とコツ”

——社会人になると、家庭や仕事に追われて勉強の時間が取りにくくなります。皆さんはどのように両立されていますか?

特に試験前に業務が忙しくなると、直前でまったく勉強できないというリスクがあるので、早めに始めることを意識しています。
とはいえ本格的に集中できるのは結局ギリギリの時期になることも多いです。独身の頃は夜に時間を取れていましたが、今は家庭があるので、いかにすき間時間を活用するかが重要です。

私も早めにスタートします。まず過去問を解いてから、理解できていない部分を補完していく形で勉強を進めます。一から始めると終わらないですから。
移動中も活用し、仲間と情報共有しながら効率的に学習しています。

——どのように隙間時間を活用していますか?

私はAnkiという暗記アプリを使って、持ち歩きながら覚えるようにしています。机に向かう時間が限られるので、スマホ学習が中心です。

私も小さな本を持ち歩いていましたし、専門医のテキストは電子化してスマホやPCに入れてました。自分でまとめたノートも苦手な部分だけ抜き出して見返せるようにしていました。

私はまだ紙の問題集に直接書き込むスタイルが多いです。若い先生方がiPadで整理しているのを見て、憧れつつも、使いこなせていません……。でも、配布されたPDFはスマホのブックアプリに入れて移動中に読んでいます。

皆さん、“紙とデジタルのハイブリッド”をうまく使っている印象です。あと、まとめを作るのって時間かかりませんか?私は要点だけ書き出して暗記に使っています

まとめといっても、図などを綺麗に貼るのではなく、箇条書きで“殴り書き”のようなスタイルです。
間違えた問題は要点を箇条書きにして、同じ問題を2回間違えたら色をつけて“要チェック”と分類します。自分の苦手分野が一目で分かるようになりますし、復習の優先順位にも役立ちます。

私は間隔反復(スペースド・リハーサル)を意識していて、問題集を4周ほど繰り返します。忘れた頃に復習すると記憶の定着が良いんですよね。

Ankiでも忘れかけたタイミングで出てくるカードって、ちょうど覚え直しやすいです。
私は音声録音した自分の暗記メモを、移動中に聞くようにもしています。stand.fmなど、普段使っている音声アプリをそのまま活用してました。

耳から覚えるというのは盲点でした。次に試験を受けるときは、ぜひ取り入れてみたいです。

——隙間時間の重要さと活用方法が明確になりました。ポイントをまとめておきます。

限られた時間を最大限活用する”工夫とコツ”」まとめ

  • 仕事や家庭と両立するためには、早めに学習を始め、移動時間などのすき間時間を活用する工夫が重要
  • 紙やアプリ・音声学習など、なんでもよいので自分にあった効率的な学習方法を見つけることが大切
  • 苦手分野については反復学習を導入し定着に重点を置く

勉強し続けてきたからこそ辿り着いた継続とインプット、集中の極意

——今後何かを学ぼうとする人に向けて、工夫やおすすめの方法などがあればぜひ教えてください。

自分に合った方法を早く見つけることが大事だと思います。短時間集中が向いている人もいれば、コツコツ型が合う人もいます。勉強に使える時間帯も人によって違いますし、それを踏まえて計画を立てるといいですね。試験がない興味のある分野なら、自由にのびのびと学ぶことも可能です。私もそういった学びに今後取り組んでいきたいです。

やっぱり試行錯誤して、自分に適したやり方を見つけるのが大事ですね。私は、最初に試験日などのゴールを明確に設定して、そこから逆算して計画を立てるようにしています。それで全体像が見えやすくなるんです。

まさにその通りですね。自由で純粋な学びって、集中力も高まるような気がします。

先ほど「隙間時間を活用することが大事」と述べましたが、その一方で「オンとオフの切り替え」と「継続の習慣化」も大事です。
仕事の隙間や家で“ながら勉強”をしていた時期がありましたが、今思えばオフの時間を意識して確保したほうが気持ちの余裕が生まれたと思います。子育てや家事もあるので、思い切って「自宅では勉強しない」と割り切るのも工夫のひとつですね。

その通りだと思います。私も寝落ち寸前で問題集を開いていても意味がないと感じたことがあります。切り替えって本当に重要ですね。習慣化できないと、結局やらなくなってしまいます。

私も「ここではやらない」と決めたら、むしろ効率が良くなった気がします。それから、「まず5分だけやる」「プリントを印刷するだけでもOK」と自分に許可を出すようにしています。

わかります。それに、勉強を習慣化できず期間が空くと、よほど記憶力に自信がない限り、すぐに忘れてしまいますよね。

——暗記のコツを教えてください!

私が意識している小さな工夫は、暗記ものは寝る直前に見ること。寝る前は記憶に適した時間帯と言われています。それと、インプットだけでなくアウトプットを意識していて、学生や研修医に教えることで自分の理解を深めています。記憶に最も良い比率はIN:OUT=3:7とも言われていて、問題集を解くのは理にかなってますよね。インプットしたらその3倍近くアウトプットする必要があるととらえておくとよさそうですね。

「わかる」と「できる」は違うと、私も受験時代に講師から言われたことがあります。インプットしてわかったつもりになっていても、自分の言葉で説明しようとすると、実は理解が曖昧だったということがあります。

試験でなくても、具体的な目標があると勉強を継続しやすいですよね。逆に目的がないと続かない。私の英語学習がそうでした。

——集中力を維持するために気を付けていることはありますか?

あと私は飽き性なので「ポモドーロテクニック」を活用しています。25分集中+5分休憩を繰り返す方法です。休憩時は目を休めるために「20-20-20ルール」(20分ごとに20秒、20フィート先を見る)も意識しています。

ポモドーロテクニック、初めて聞きました。集中と休憩を繰り返すのは確かに効果ありそうですね。休憩中についスマホに手を伸ばしてしまいがちですが、眼精疲労の点からも目を休めるようにしないといけないですね。

由来は1980年代のイタリア人ソフトウェア開発者が、トマト型のキッチンタイマーを使って考案したそうです(笑)。確かに時間を決めないと、ついネットサーフィンして時間が過ぎちゃいますしね。

——具体的な継続や暗記の方法論がわかりました!本テーマのまとめはこちらです。

勉強し続けてきたからこそ辿り着いた継続とインプット、集中の極意」まとめ

  • 自分に合った勉強方法を早く見つけることが何より大切
  • 継続のコツはオンとオフを切り替えながら学習を習慣化することで、無理のない学びにすること
  • 集中するために学習時間を区切ることやアウトプットを導入


——ここまで、受験から学生生活、そして社会人になってからの学びまで、さまざまなお話を伺ってきました。最後に、座談会全体を振り返って整理してみましょう。

座談会まとめ

医学部受験のポイント:典型問題の演習と苦手科目の底上げが重要

医学部時代:流れに乗り仲間との情報共有しながら進めると◎。語学やビジネス、ITなどの非医療分野への挑戦が将来の選択肢を広げる

就職後:隙間時間の活用が大切

全体を通じて:自分に合った勉強法が大切。継続・集中できるポモドーロや音声学習、アプリ学習などを活用すると効率的


AIMEDは、このような「気になるけど病院で医師に聞きにくい」「本当のところが知りたい!」という皆様の質問にお答えするメディアです。【医師に調査をリクエスト】から、ご質問をいただきましたら、本記事のように医師が座談会を開催して、皆様のご質問を検討いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修

高宮 新之介 医師

高宮 新之介 医師

昭和大学卒業 大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術外科を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。
昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。
外科専門医医学博士・がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了・JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了・ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)・BLS(Basic Life Support)

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