鼻うがいの効果とは?正しいやり方は?医師3人で効果や方法を討論

鼻うがいの効果とは?正しいやり方は?医師3人で効果や方法を討論

イントロダクション

今回寄せられた質問は「鼻うがいにはどのような効果があるの?」「正しいやり方は?」です。

鼻うがい専用液をCMやドラッグストアなどで目にすると、「気持ちよさそう」「鼻のなかがすっきりしそう」と感じる方も少なくありません。一方で、医学的に効果はあるの?と気になりますよね。そこで今回は医師3名による座談会で鼻うがいの効果や方法を検討しました。

【参加医師の自己紹介】

あらた先生@呼吸器外科
2015年医師免許取得後、大学病院にて呼吸器外科医として肺がんの手術を中心に担当している。また、非常勤にて呼吸器内科・一般外来や訪問診療も行っている。鼻のつらさに関する相談をよく受けており、今回の座談会を通じて得られた知見を普段の診療に活かしたいと考えている。

しまりす先生@腎臓内科
2009年医師免許取得。あらた先生と同様に内科外来にて鼻に関する相談をよく受けている。本座談会を通して、他の先生方との議論から知見を深めることを目的としている。

珊瑚先生@がん・緩和ケア内科
2013年医師免許取得。東南アジア在住時に大気汚染を懸念して鼻うがいを始め、帰国後も日常的な習慣として継続している。

鼻症状がおきる原因は?

——まず、臨床ではどのような鼻症状がみられますか?

鼻の症状としてよく見るのは鼻水(鼻汁)、鼻づまり、です。アレルギー性鼻炎は本当に多く、日本耳鼻咽喉科学会の全国調査では国民の約2人に1人が何らかのアレルギー性鼻炎を持っているという結果もありました(参考1)。スギ花粉症だけでも約4割に達しており、外来で「鼻水・鼻づまり」を訴える方が非常に多いのも納得です。昔に比べて患者数が増え続けているのも特徴的ですね。
鼻づまりはアレルギー性鼻炎でもよく見られますが、副鼻腔炎でもみられますね。副鼻腔炎では、後鼻漏(鼻汁が喉に回る感じ)を伴ったり、膿性の鼻水や嗅覚障害がみられます。後鼻漏も時々相談があります。

呼吸器ですと咳から鼻の症状をうたがうことがありますね。後鼻漏と言いますが「鼻の奥から喉にかけて鼻水が垂れてくる」という症状です。鼻って奥で喉につながっているわけですよね。診察室では、「喉に鼻水が回って痰のような感じがする」「常に喉に何かが絡まっていてイガイガして咳き込む」という訴えが多いです。後鼻漏自体の頻度は実は多くて、鼻炎患者の約1割は何らかの形で後鼻漏を訴えている、という報告もあります(参考2)。

——珊瑚先生の緩和領域で、特異的な鼻症状はみられますか?

緩和領域では鼻の症状があまり特異的な訴えになることは少ないですね。先生方同様、感冒症状やアレルギー症状、花粉症の季節での一般内科診療でお目にかかることが多いです。鼻汁、鼻閉、嗅覚障害、後鼻漏と関連した咳嗽などが主に訴えとして上がる症状になります。

急性副鼻腔炎は、これら一般的な鼻炎症状に比べて頻度がグッと下がる印象です。私自身は鼻風邪をひくことも多く、風邪のたびに鼻閉と咽頭違和感を感じていまして、ついに最近、本物の急性副鼻腔炎になりました。発熱、顔面痛、頭痛のフルコースは、今までの症状の比ではなく、これが急性の副鼻腔炎かと実感しました。

これまでに鼻炎症状の患者さんを数百人レベルで外来で処方していますが、典型診察所見から急性副鼻腔炎と診断したのは確かに2人ほどであり、実体験の感覚とも合致します。もちろん、発熱などがない場合も急性副鼻腔炎の臨床診断基準を満たすことは多くあります。軽症副鼻腔炎に抗菌薬非投与経過観察とガイドラインに推奨もあり、中等症副鼻腔炎との違いを実感した、という実体験でした。

私も急性副鼻腔炎はそんなに多くはありませんね。主人が頭が痛くて、鼻が調子が悪いと言っていた時に試しに上顎洞をとんとんと叩いたらとても痛がっていて、教科書的だなぁとしみじみした記憶があります。

確かに、急性副鼻腔炎は頻度はそう多くないけれど、症状が出るとインパクトが大きいですよね。

「鼻症状がおきる原因は?」まとめ

  • 国民の約半数が罹患しているアレルギー性鼻炎が鼻水や鼻づまりの最も一般的な原因であり、外来でも相談頻度が非常に高いことが確認された。
  • 主な症状は鼻水・鼻づまりである一方、咳の原因ともなる後鼻漏(鼻水が喉に流れる症状)も鼻炎患者の約1割に認められるなど、比較的頻度が高い。
  • 急性副鼻腔炎は一般的な鼻炎に比べ頻度は低いものの、発熱、顔面痛、頭痛といった症状が強く、症状のインパクトが大きい疾患として認識された。

鼻うがいの効果と正しいやり方

——ガイドラインなどで鼻うがいはどのような位置づけですか?

ガイドラインを読む限り、鼻洗浄についての記載は多くなく、根拠をもった推奨処置として説明しづらい印象があります。
想像ではありますが、感染症分野が鼻洗浄に慎重な立場を取ってきたため、前向き試験が組まれにくく、結果としてガイドラインにも入りにくかったのではないかと考えています。
アメリカでは、水道水由来の汚染水を用いた鼻洗浄でアメーバ脳炎を発症した報告がありました。この報告が出るまでは、少しずつ研究や症例報告があったようですが、近年はほとんど見かけなくなっています。

水の安全性が最優先という点は重要ですね。アメーバの報告以降、鼻うがい自体が危険という印象が広がったのも理解できます。

急性ウイルス性から細菌性副鼻腔炎では、症状緩和の補助療法として「実施可(弱い推奨)」という形で、米国耳鼻咽喉科学会や感染症学会のガイドラインに明記されています(参考3)。

慢性副鼻腔炎についても、AAO-HNSFのガイドラインでは症状緩和として鼻洗浄が推奨されています。点鼻ステロイドと同列の位置づけですね。

ただし、いずれも推奨度は強くなく、一貫していない部分があるのも事実です。

——珊瑚先生はどのような経緯で鼻うがいを始めたのでしょうか?

コロナ禍では症状改善効果に関する報告が出て、鼻うがいが再び注目されました。
その報告を見て、コロナ禍中に自分自身は鼻うがいを始めました。推奨されるのは市販の生理食塩水、もしくは煮沸水です。日本の衛生環境では問題は少ないと考えていますが、私は自己判断で水道水を使用しています。これは他人に勧めるべき行為ではないと考えています。

——しまりす先生は、実際に鼻うがいを受けたり、教わった経験はありますか。

耳鼻科で実際に行っているところがあり、そこで施行してもらったり、方法を教えてもらった経験があります。
自分で患者さんに指導したことはありません。

そのときは、どのような方法でしたか。

いずれも生理食塩水を使用していました。
片側の鼻から洗浄液を流して、反対側の鼻から出す方法です。
少し下を向き、洗う側の鼻が高くなるように顔を傾け、比較的弱めの圧で流していました。

——医学的には鼻うがいはどのように行うとよいのでしょうか?

基本は生理食塩水が推奨されていますが、高張食塩水(2〜3%)は鼻閉の軽減を実感する人もいます。ただし、しみやすいため「痛い」という印象が先行しやすいのも事実です。

実際には、まず等張の生理食塩水が無難でしょう。EPOS 2020でも、等張食塩水やリンゲル液が推奨されており、高張液は粘膜刺激などの副作用から慎重に扱うべきとされています⁴。
前かがみで、やさしく流すのが基本です。痛みが出る場合は、濃度や圧を下げたほうがよいでしょう。
反対側から出ない場合は角度を微調整し、無理に押し込まないことが重要です。
終了後は、やさしく鼻をかむこと、器具は使用後に洗浄して乾燥させることも大切です。
症状がある時期であれば、1日1〜2回程度が現実的で、やりすぎると粘膜が荒れることもあります。

「鼻うがいの効果と正しいやり方」まとめ

  • 副鼻腔炎において鼻うがいは補助療法として位置づけられており、推奨度は弱い。
  • 使用する水の安全性が最重要で、生理食塩水または煮沸水が基本。
  • 等張液・弱圧・前かがみ姿勢を基本とし、粘膜刺激を避ける必要がある。

鼻うがい以外の鼻症状への治療法と対処法

——鼻うがい以外に、鼻症状にはどのような治療や対処法があるのでしょうか。

鼻症状は、アレルギー、感染、非アレルギー、構造的な問題など原因が幅広いので、まずは原因別に考えることが重要だと思います。

——アレルギー性鼻炎の対処法を教えてください

患者さんが一番つらいのが鼻水なのか鼻づまりなのかを最初に把握することが大切です。

治療の軸としては、点鼻ステロイドと第二世代抗ヒスタミン薬が中心になります。
点鼻ステロイドは即効性というより、数日から1~2週間で効果が安定してくるため、毎日継続することや、症状が軽い日も続けることを説明しています。
使用方法も重要で、鼻中隔を避けて外側に向けて噴霧することで、刺激や鼻出血を減らせます。

症状が強い場合には、点鼻抗ヒスタミン薬や配合スプレーを検討することもあります。
高血圧や不整脈、前立腺肥大、緑内障、小児などでは、薬剤選択に注意が必要ですね。

——感染症、特に風邪や急性副鼻腔炎の場合は、どのように対応されていますか。
抗菌薬を考えるサインなども含めて教えてください。

しまりす先生@腎臓内科
原因に応じて治療方針を検討する必要があると思います。
かぜの多くはウイルス感染なので、初期は対症療法が中心になります。
具体的には、解熱鎮痛薬や去痰薬などで経過をみることが多いですね。
一方で、以下のような症状・状態が続く場合には、細菌性副鼻腔炎を疑い、抗菌薬を検討します。

・膿性の鼻汁が続く
・顔面痛や圧迫感が強い
・発熱が持続する
・症状が7~10日以上改善しない、あるいは一度よくなってから再度悪化する

一般の方には「黄色い鼻水=すぐ抗菌薬」と思われがちですが、実際は経過を見ることが重要ですよね。
症状の強さや日数、改善傾向があるかどうかが判断のポイントになると思います。

風邪でも鼻水や鼻づまりが強い場合、抗ヒスタミン薬を使うことについてはどう考えていますか。

私自身は、風邪に対して抗ヒスタミン薬を処方することはあまりありませんでした。
鼻づまりや鼻汁がかなり強く、日常生活に支障がある場合には、耳鼻科での吸引などの処置を検討する方がよいケースもあると考えています。
他の先生方の対応については、ぜひ勉強させていただきたいです。

あらた先生@呼吸器外科
私は風邪に対して抗ヒスタミン薬を処方することがあります
症状や患者さんの希望、生活への影響を考慮した上で、選択肢の一つとして提示しています。
鼻水やくしゃみが強く、「仕事に支障が出ている」といった場合には、症状緩和を目的に短期間使用することがあります。
抗ヒスタミン薬は鼻症状を軽減する効果がありますが、風邪そのものの治癒を早めるものではなく、あくまで対症療法として使っています。
ただし、小児には推奨されない場合がある点は注意が必要ですね。

私も抗ヒスタミン薬を処方することは多いです。
抗菌薬は使わず、抗ヒスタミン薬のみで対応することもあります。
眠気などの副作用が薬剤によって異なるため、患者さんの希望に合わせて選択しています。
小児では、熱性けいれんとの関連が否定できない薬剤もあるため、その点には注意しています。
最新のエビデンスまでは追えていませんが、臨床上の使い分けは意識しています。

抗菌薬が必要な症例は限られていますし、風邪による鼻症状では使える薬が少ないと説明することが多かったので、とても参考になりました。

「鼻うがい以外の鼻症状への治療法と対処法」まとめ

  • 鼻症状の治療は、アレルギー・感染など原因別に考えることが重要である。
  • かぜによる鼻症状の治療は、対症療法が基本で、抗菌薬は経過や症状から慎重に判断する。
  • 抗ヒスタミン薬は症状緩和の選択肢になり得るが、年齢や副作用に配慮が必要である。

鼻症状の予防策は?

——先生方の実際にやっている、またはおすすめの鼻症状予防はありますか。
鼻うがいは予防としてもやるのでしょうか。

アレルギーに限らず、ウイルス感染による鼻症状という意味でも予防は大事ですよね。
予防の基本としては、やはり手洗い・マスク、そして粘膜を乾燥させないための加湿や水分摂取といった点が大切になるのではないかと思います。
一方で、アレルギー性鼻炎などアレルギーによる鼻症状の予防では、抗原回避が基本になりますよね。花粉の多い時期にはマスクや眼鏡を使用したり、帰宅後に衣服や髪についた花粉を落とすなど、日常生活での工夫も重要だと感じています。きちんと取り組むことは意外と難しく、意識してやらないとなかなか継続的にしっかりとはできない気もします。

抗原回避は大事ですよね。
シンプルですが、ワセリンなどを鼻腔の入り口に塗るのも一定の効果があるようです。
しまりす先生@腎臓内科が耳鼻科で鼻うがいをやられた時は、予防というより、症状に対する対処といった使い方でしたか。

私の場合は、まさに症状があるときの対処としてでした。もともと慢性副鼻腔炎があるので、鼻づまりや分泌物が多いときに耳鼻科で鼻うがいをしていただいたことがあります。仕事をしているとなかなか通院できず、どうしても中断しながらにはなってしまいましたが。
個人的な経験としては、予防というよりも、たまった分泌物を流して症状を楽にする、鼻腔内の環境を整える処置という印象です。耳鼻科で処置していただくと、その場でかなりすっきりする感覚がありました。
慢性で経過しているので、普段は頭重感などを感じていなかっただけなのだと、そこで改めて思いましたね。

払い流すので予防になるのではないかという印象で考えていたのですが、実際には症状緩和の場面が多そうですね。
しまりす先生がおっしゃるように、アレルギー性鼻炎ではアレルゲンを洗い流して症状を軽くする・悪化しにくくするという考え方があり、症状重症度の低下の可能性が示された報告もあります。
ただし、エビデンスの質はlow〜very lowで、最適な濃度・頻度・量は不明です。したがって、これは一次予防というより「症状コントロールのための補助的セルフケア」程度の感じかもしれませんね。

——珊瑚先生@緩和は鼻うがいを実践されているとうかがいましたが、症状がある前からルーチンで行っているのでしょうか。

症状のない時からルーチンです。
もともとコロナ禍ではじめた習慣でした。罹患患者の鼻うがいはコロナ症状を早めに改善するという論文が出て、症状緩和に使える方法のひとつであるとはじめて認識しました。
その後は、「鼻腔の環境維持、抗原を洗い流す」ことに期待して、人混みの多いところにマスクなしで長時間滞在した時、感染症の流行期間の帰宅後などに行っています。
そのため、ゆるく習慣化しているとはいえ、頻度は週0.5〜3回とまちまちです。また、1日に複数回行うことはほとんどありません。

たしかにコロナ禍にはいろいろな方法が試されましたよね。皆さん手探りでしたし。

週に0.5〜3回実践されているのですね。
コロナ禍の最初の頃は本当に未知の脅威という感じでしたよね。
私の経験では症状緩和に対して行った、というところでしたが、症状がある前から行うのも、珊瑚先生@緩和がおっしゃっているように、洗い流すことで何らかの良い影響がありそうです。

「鼻症状の予防策は?」まとめ

  • 鼻症状予防の基本は、手洗い・マスク・加湿・水分摂取などの感冒対策である。
  • アレルギー性鼻炎の予防では、花粉や抗原の回避が基本。具体的にはマスク、眼鏡、帰宅後に花粉を落とす工夫、鼻腔入口へのワセリン塗布など。
  • 鼻うがいは予防目的でも実践例はあるが、主には症状緩和や鼻腔環境の調整として用いられており、一次予防というより補助的セルフケアとして位置づける見方が中心であ

座談会まとめ

今回は鼻うがいの効果や正しいやり方について、鼻うがいを実践している医師、鼻症状を多くみている医師を中心に検討いたしました。本座談会のまとめはこちらです。

 鼻症状は原因の見極めが重要
鼻水・鼻づまりは非常に一般的だが、原因はアレルギー、感染、副鼻腔炎など多岐にわたる。特に抗菌薬の適応は「経過」で判断することが重要で、症状の持続や再悪化、発熱や顔面痛の有無を総合的に評価する必要がある。

 鼻うがいは補助療法として有効
鼻うがいは生理食塩水を用いれば安全に実施でき、鼻閉や分泌物の除去による症状緩和に有効とされる。一方でエビデンスは限定的であり、予防効果は明確ではない。治療の中心ではなくセルフケアの一手段として位置づけるのが現実的である。

治療と予防は基本の徹底が重要
治療は原因別に行い、アレルギーでは点鼻ステロイドや抗ヒスタミン薬が基本となる。予防は手洗い・マスク・加湿などの基本対策と抗原回避が重要で、鼻うがいは補助的に用いられる。特別な方法より日常的な継続が効果を左右する。


鼻うがいは、ガイドラインなどでの推奨度は低いものの、正しく実施すれば鼻づまりなどの症状を緩和する効果は期待できるといえそうですね。セルフケアの一環として適切な方法で、取り入れてもよいかもしれません。

AIMEDは、このような「気になるけど病院で医師に聞きにくい」「本当のところが知りたい!」という皆様の質問にお答えするメディアです。【医師に調査をリクエスト】から、ご質問をいただきましたら、本記事のように医師が座談会を開催して、皆様のご質問を検討いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

参考文献

  1. 『Saline irrigation for allergic rhinitis』(Cochrane Database of Systematic Reviews)
  2. 『Clinical practice guideline (update): adult sinusitis』(American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation)
  3. 『日本人におけるアレルギー性鼻炎の有病率に関する全国調査』(日本耳鼻咽喉科学会)
  4. 『後鼻漏の臨床的検討』(日本鼻科学会)

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