便秘で病気になる?便秘だと思ったら怖い病気だった?便秘があなどれない理由と対処法
監修
高宮 新之介 医師
昭和大学卒業 大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術外科を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。
昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。
外科専門医医学博士・がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了・JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了・ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)・BLS(Basic Life Support)
イントロダクション
便秘に悩む方は少なくありません。ドラッグストアでも気軽に便秘薬を購入できることもあり、医療機関を受診せずに対処している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、自己判断で対処してしまうと大変な経過を辿ることもあるようです。
そこで今回は、数多くの便秘の患者さんと向き合ってきた医師3名に便秘の恐ろしさや対処法を質問しました。便秘に悩んでいる方はぜひご一読ください!
【参加医師の自己紹介】

珊瑚先生@がん・緩和ケア内科
2013年医師免許取得。緩和ケアチームで症状緩和を担当。オピオイド関連便秘など、消化器症状の診療に日常的に関わっている。

あらた先生@呼吸器外科
2015年に医師免許取得。大学病院で呼吸器外科医として肺がん手術を中心に担当。非常勤で内科外来・訪問診療も行う。

たけちん先生@呼吸器外科・産業医
2016年医師免許取得。肺がんの手術経験を多く持ち、現在は外科医と並行して救急外来・産業医としても活動。
便秘はなぜダメなの?便秘のせいでなりやすい病気、便秘に隠れがちな病気とは
——なぜ便秘はよくないのでしょうか?便秘が原因で起こりうる疾患や便秘に隠れてしまい診断がおくれやすい疾患について教えてください
たとえば痔核、虚血性腸炎、直腸潰瘍、悪性疾患…。外科の先生方なら、憩室炎や糞便イレウスなどもご経験がありそうですね。
便秘については、2つの観点で考えるとわかりやすいと思います。
①「何かしらの病気が原因で便秘になる」ケース。たとえば大腸がんやパーキンソン病、甲状腺機能低下症などです。
②「便秘が続くことで病気を引き起こす」ケース。痔や憩室炎、いきみで迷走神経反射が起こることもありますね。
なるほど、非常に分かりやすい整理ですね。もし可能であれば、実際の臨床経験から印象的な症例があれば教えていただけますか?
便秘の原因が病気だった例で印象的だったのは、70代男性で、最近お腹の張りを感じつつ便が細くなっていた方。
便秘が進行し、ついに出なくなって救急受診。大腸がんによる腸閉塞で、人工肛門造設→後日根治手術という経過でした。
——便秘が原因で病気になった症例はありましたか?
50代男性で、朝トイレで強くいきんだ後から腹痛。腸穿孔で緊急手術になりました。これは便秘が直接引き金になった典型例ですね。
私が経験したのは、「痔が悪化してしまった50代の女性」のお話なんですが、
この方は肺の手術後に入院していた患者さんで、やっぱり術後って活動量が減ることもあって、徐々に便秘傾向になっていったんですね。
4日ほど排便がなくて、「ようやく出たと思ったら、すごく硬くていきんでしまった」と。
その後から「お尻が痛い」と訴えがあり診察すると、もともとあった内痔核が腫れて出血もあり、本人も「座ってられない」とおっしゃっていました。
もともとゴム輪結紮(RBL)を予定していたそうなんですが、炎症と腫れが強かったため、まずは坐剤と軟膏で数日間の保存的治療を行いました。
痛みが落ち着いてから改めて処置を行って、結果的には無事にコントロールできたケースです。
このとき強く感じたのは、「便が出た=解決」ではないということです。
硬い便を無理に出すと、一時的にはスッキリしても、その後に痔が悪化して痛くなってしまう。
そうなると今度は排便が怖くなって、また我慢するようになってしまう…この“便秘の悪循環”に入ってしまう患者さんは、外来でもよく見かけます。
だから術後や外来では、「出せればOK」じゃなくて、「どう出すか」「便を柔らかく保つにはどうしたらいいか」ということをお伝えしてますね。
そもそも内痔核になったのも便秘がちでトイレに座る時間がいつもながかったのも原因だと思います。
お二人のケースからも分かるように、便秘は日常の症状ではあるけれど、油断すると本当に怖いですよね。便秘を我慢することで腸内圧が上昇し、憩室形成や虚血性腸炎を発症することもあります。いずれも、日頃の便秘予防で様々な病気のリスクを減らすことができるといえます。
「便秘はなぜダメなの?便秘のせいでなりやすい病気、便秘に隠れがちな病気とは」まとめ
- 便秘は「病気の原因」かつ「病気の結果」の両面があり、軽視できない。
- 実際に、便秘をきっかけに大腸がんや腸穿孔、痔核悪化などが起こった。
- 「出せればOK」ではなく、「どう出すか」が便秘の予防・再発防止に重要。
便秘にならない食生活と生活習慣
——続いて、「便秘にならない食生活と生活習慣」というテーマでお話を伺えればと思います
便秘って本当に患者さんからの相談も多くて、慢性化すると生活の質にも影響が出ますよね。お二人は診療のなかで、どのように便秘対策を説明されていますか?
便秘は直接命に関わる病態ではないんですが、長引くとQOLを確実に下げてしまいますし、術後の回復にも影響します。私はまず、「食物繊維を摂りましょう」という抽象的な言い方ではなく、「手のひら一杯の野菜を毎食」「味噌汁は具沢山に」と、患者さんが生活の中でイメージできる形にして伝えるようにしています。
わかります。「野菜を摂りましょう」だと、それで何をどうすればいいのか分からない方も多いですからね。私は「朝食を毎日同じ時間に食べましょう」とよく話しています。胃大腸反射の仕組みを簡単に説明すると、結構興味を持って聞いてくださる方が多い印象です。
そうですね。朝食によって胃が伸展されると、大腸が反射的に動くので、自然な排便につながりやすい。特に高齢の患者さんには「毎朝8時にコップ一杯の白湯を飲んでから、必ず朝食を摂る」といったリズムづくりをおすすめしています。
——便秘と聞くと食物繊維をイメージしますが、どのように選べばよいのでしょうか?
食物繊維は種類によって作用が異なりますよね。水溶性は発酵されて短鎖脂肪酸を作り、腸内環境を整える働きがあります。不溶性は物理的に便の量を増やして腸を刺激します。比率としては水溶性1に対して不溶性2の割合が推奨されています(参考1)。
なるほど、正直そこまで詳しくは話していなかったです。野菜ジュースばかり飲んでいても不溶性が不足するというのは、患者さんにも伝えたいですね。
そうですね。あと、水分との組み合わせも重要です。食物繊維を多く摂っていても、水分摂取が足りないと便が硬くなって逆効果になることもあります。「一気に2リットル飲まなくても、食事のたびに小さいコップ一杯を意識してみてください」と言うと、取り入れやすいようです。
私は最近、便秘によい果物の具体例としてキウイをよく挙げています。キウイは水溶性・不溶性どちらの食物繊維もバランスよく含まれていて、便通改善に効果があるというデータもありますし。あと、便秘の方がよく摂りがちなバナナやりんごも、摂り方を間違えると効果が薄くなってしまうこともあるので、そうした補足もしています。
——運動も便秘には効果的ですか?
運動も便秘には有効ですよね。最近読んだメタアナリシスでは、中等度の有酸素運動が排便回数の増加に寄与するという結果が出ていました(RR=1.97, 95%CI: 1.19–3.27)(参考2)。
私も読みました。運動の内容としては、週3〜5回、1回30分程度の速歩や、軽い筋トレ、ストレッチを組み合わせるのがよいとされていましたね。入院患者さんにも「今日は廊下を2往復」「明日は談話室まで」と少しずつ動いてもらうようにしています。
前向き研究では、1日の歩数が6,900歩を超えると腸管通過が有意に短縮されたという報告もあります(参考5)。対象が便秘の方ではないので限定的な適応ではありますが。
たけちん先生のおっしゃった運動に関連してですが、運動習慣がない方には、いきなり30分のウォーキングはハードルが高いこともあります。そのため、「まずは毎日の歩数を今より+1000〜2000歩増やすところから始めましょう」といった形で目標設定をしています。これなら特別な運動時間を取らなくても、例えば「通勤の帰り道だけ一駅分歩く」「買い物の際に駐車場を少し遠くに停める」といったように、普段の生活に自然に取り入れやすいと考えています。
あるいは小技ですが「15分散策」をおすすめしています。やり方は簡単で、15分好きに裏路地やいろんな道を気分のままに歩く方法です。意外な発見があって楽しいんですよね。その後15分経ったら帰ります。合計で約30分弱のウォーキングになります。「いきなり頑張って30分運動しよう」よりもハードルが低いです。
緩和ケアでも歩行や軽運動が可能な患者さんには、可能な限り活動性を維持してもらうよう働きかけています。腸管蠕動だけでなく、気分の落ち込み予防にもつながりますし。あと、排便姿勢の工夫も意外と盲点ですよね。
確かに、排便時の姿勢ってなかなか指導する機会がないですが、かなり重要だと思います。洋式トイレだと骨盤の角度的に排便がスムーズにいかないこともありますよね。
はい。実は和式のような蹲踞姿勢では、恥骨直腸筋の緊張が緩んで直腸が真っすぐになりやすいんです。洋式の場合でも足台を置いて前傾姿勢を取ることで、同じ効果を得やすくなります。患者さんにも「座った時に足がおける台、子ども用の踏み台などを活用してみてください」とお伝えすることがあります。
それ、いいですね。特に高齢の方で「トイレでいきむのが辛い」とおっしゃる方には、姿勢改善の話をするととても前向きに受け止めてくださいます。
ちなみに、FODMAP食についてはどう思われますか?過敏性腸症候群(IBS)の患者さんでは低FODMAP食が効果的とされていますが、一般の便秘患者さんには注意が必要ですよね。
FODMAPは一時的な制限としては有効ですが、長期的な制限は栄養バランスを崩すリスクがあります(参考3)。私はIBSで腹部膨満が強い方に「2〜4週間試してみましょう」と提案する程度です。
ヨーグルトが実は高FODMAP食品というのは、意外ですよね。善玉菌の補給として勧められる一方で、合わない人には逆効果になる可能性もある。
ほかにも、ヨーグルトを代表としたプロバイオティクスも注意が必要ですね。便通異常症診療ガイドラインでも「排便回数や腹部症状の改善に有効」とされてはいますが、製品ごとに菌数や効果にばらつきは出るでしょうし、もともとの身体の状態によって菌血症を引き起こした報告もありますので。
私は「ヨーグルトや乳酸菌飲料を2〜4週間同じものを試してみてください。週に1回でも排便が増えたり、残便感が減れば合っている可能性が高いです」と伝えています(参考4)。ただし、水分や食物繊維が不足していると効果も出づらいので、全体の生活改善の一部として紹介するようにしています。
「便秘にならない食生活と生活習慣」まとめ
- 食物繊維は水溶性と不溶性のバランスを意識し、十分な水分摂取と組み合わせることで最大限の効果が得られる。
- 朝食の習慣化、有酸素運動、適切な排便姿勢は便通改善の重要な要素である。
- プロバイオティクスやFODMAP食は個人差を考慮し、生活習慣の改善と併せて慎重に導入すべきである。
どの薬がよいの?飲み続けても大丈夫?便秘薬との付き合い方
——便秘の患者さんにどのように処方を進めていますか。患者さんからよく受ける質問もあればぜひ教えてください
外来ではまず、「便秘の基本は生活習慣の改善ですよ」と必ずお話しします。食物繊維や水分の摂取、適度な運動が大前提です。それでも改善しない場合に薬を使う、という流れです。
最初に使うことが多いのは酸化マグネシウム(マグミット®)ですね。これは便に水分を含ませて柔らかくします。「柔らかくするだけでは?」と質問されることがありますが、柔らかくして量を適切に増やすと腸の動きが改善されると説明します。腎機能が低下している方では高マグネシウム血症のリスクがありますので、その点は必ず確認します。
やはり一般診療でも酸化マグネシウムが第一選択ですよね。緩和ケアでもよく使います。
そうなんです。最初は少量から始めるため、すぐには効果を実感できないこともあります。ですから「少しずつ増やしていきます」とあらかじめ伝えています。
私も同じですね。生活習慣改善を基本に、酸化マグネシウムから始めます。便通異常症診療ガイドラインでも浸透圧性下剤が第一選択になっています。それでも改善が乏しい場合は、ルビプロストン(アミティーザ®)、リナクロチド(リンゼス®)、エロビキシバット(グーフィス®)を検討します。作用機序はあらた先生の説明通りですが、私は患者のライフスタイルや服薬継続のしやすさも考えます。
エロビキシバットは胆汁酸の再吸収阻害作用のある薬剤ですね。
そうですね。漢方の大建中湯を併用することもあります。入院中や一時的な便秘ではセンノシドやピコスルファートなどの刺激性下剤を頓用で使いますが、耐性や依存のリスクがあるので長期使用は避けています。
刺激性下剤は速効性がありますが、やはり乱用には注意ですね。副作用の説明は必須です。
便通異常症診療ガイドライン2023では、ルビプロストンやリナクロチド、エロビキシバットが特に効果的な患者群は明確には示されていないとされています。それでも、ルビプロストンは若い女性で嘔気が出やすい報告がありますし、妊娠中は禁忌ですので、若い女性への処方は避けています。
薬価の面も考えますか?
毎日使用する薬はコスト面も重要です。特に長期処方になる患者さんでは、薬価の影響が生活に直結しますから浸透圧性下剤や刺激性下剤は安価なので重宝します。
同感です。薬効、安全性、患者背景、そしてコスト。このバランスをどう取るかが便秘薬選びのポイントですね。
また、まったく作用の異なる便秘薬にナルデメジンというオピオイド誘発性便秘症にのみ適応がある薬があります。がん患者さんのがん由来の痛みはひどく、一般的にオピオイドと呼ばれる医療用麻薬が使われます。オピオイドは腸管の運動障害を招いて強い便秘の原因になりますが、その薬です。とても効果がありますが、脳転移のある方への投与はオピオイドの効果を大きく弱めてしまうこともあるので注意が必要です。
——最後に便秘で悩む方に薬についてのアドバイスをお願いします
巷でも便秘薬の市販薬は多く、自分で購入して調整する方なども多くいらっしゃいます。
漢方やコーラック、乳酸菌など、聞きなれたものをもしかしたら使いたくなったり購入したくなったりするかもしれませんが、薬を使う時の基本的な第一選択は浸透圧性下剤ということを覚えておいてほしいですね。浸透圧性下剤は酸化マグネシウムやラクツロースなどです。一時的な環境変化が原因の時以外に、刺激性下剤を漫然と使うのは良くないということも知っておきましょう。
「どの薬がよいの?飲み続けても大丈夫?便秘薬との付き合い方」まとめ
- 便秘薬は生活習慣改善を基本に、患者背景に応じた導入が重要。
- 効果だけでなく、副作用や禁忌を事前に説明し、服薬後のフォローアップを徹底する。
- 薬価や使用頻度も考慮し、長期的に持続可能な処方設計を行う。
座談会まとめ
便秘は「病気の結果」と「病気の原因」の両面がある。大腸がんや甲状腺機能低下症などのサインとなる場合もあれば、痔核悪化や腸穿孔など命に関わる病態を引き起こすこともある。「出せればOK」ではなく、排便の質や方法まで配慮することが重要である。
食物繊維は水溶性と不溶性をバランスよく摂取し、水分補給を組み合わせる。朝食習慣や有酸素運動、正しい排便姿勢も有効。プロバイオティクスやFODMAP食は効果がある場合もあるが、個人差を考慮して慎重に取り入れる必要がある。
まずは生活改善が基本で、薬は補助的に使用する。第一選択は酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤。改善が不十分ならルビプロストンやリナクロチドなどを考慮し、副作用やコストも含めて選択する。刺激性下剤の長期使用は避け、適切なフォローアップが重要である。
AIMEDは、このような「気になるけど病院で医師に聞きにくい」「本当のところが知りたい!」という皆様の質問にお答えするメディアです。【医師に調査をリクエスト】から、ご質問をいただきましたら、本記事のように医師が座談会を開催して、皆様のご質問を検討いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 日本消化器病学会. 慢性便秘症診療ガイドライン2023.
- Exercise in patients with constipation: a systematic review and meta-analysis.
- Ong DK, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2010. “FODMAPs and IBS.
- 日本大腸肛門病学会誌. 2020; 72(10): 609–617.
- Rezamand G, Joukar F, Amini‑Salehi E, et al. The effectiveness of walking exercise on the bowel preparation before colonoscopy: a single‑blind randomized clinical trial study. BMC Gastroenterol. 2023;23(1):351. doi:10.1186/s12876-023-02987-x
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