視力低下を防ぐ対策は?40〜60代で多い原因と受診の目安
監修
栗原 大智 医師
よこすか浦賀病院 医長2017年横浜市立大学医学部医学科卒業 2年間の初期研修後、横浜市立大学眼科に入局・日本眼科学会眼科専門医
累計1000記事を超える記事作成やXやInstagramなど各種SNSで啓発活動を行う。眼科情報サイト『オンライン眼科』の記事執筆、運営。
現在、m3やmedical docなど各種メディアで啓発活動のための記事作成、講演会などを行っている。著作に『スマホ時代の眼メンテナンス』がある。
イントロダクション
今回のAIMED座談会のテーマは「視力低下を防ぐ対策」です。
40〜60代で視力の低下が気になっている方から「原因は加齢なの?」「病気?」「日常でどのような対策ができるの?」とご質問をいただきました。
そこで、老眼や白内障のような加齢に伴う変化から、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性のように見逃したくない病気まで、医師3名が深掘りました。
視力低下を招きやすい行動や、目薬・サプリ・トレーニングで視力は回復するのかについても解説します。
【参加医師の自己紹介】

イプ先生@産婦人科×医学教育
2015年に医師免許を取得。産婦人科診療と医学教育に携わる医師。産婦人科領域では、女性のライフステージに関わる健康課題に向き合いながら、医療者教育や一般の方に向けたわかりやすい医学情報の発信にも取り組んでいる。

ドクターK先生@眼科
2017年に医師免許を取得。眼科医として、老眼や白内障など加齢に伴う見え方の変化から、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性といった中高年以降で注意したい眼疾患まで幅広く診療している。

モイモイ先生@眼科
2021年に医師免許を取得。眼科医として、加齢による見え方の変化や、緑内障・白内障・加齢黄斑変性など中高年以降に注意したい眼疾患の診療に多く携わる。
40〜60代で視力が低下する原因は?加齢変化と病気の違い
——なぜ40代から60代で視力が低下するのでしょうか。
40〜60代の視力低下で多いのは、老眼と白内障が挙げられます。一方で、病気として見逃したくないのは、年齢とともに増えてくる緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などです。
老眼や白内障は加齢による変化で、多くの方に起こりうるものです。しかし、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などは、治療や経過観察が必要な病気です。こうした加齢による変化と病気の違いを見分ける上で重要なのは、見えにくさがどのように始まり、どのように進むかだと思います。
たとえば以下のようなケースは要注意です。
急な視力低下
片目だけの見えにくさ
ものがゆがんで見える
見える範囲の異常がある
普段は両目で見ているため、脳が見え方を補って異常に気づきにくいことがありますが、片目ずつ見てみると気づくこともあります。
目の病気の中には、緑内障や加齢黄斑変性のように、遺伝的な要素が関わるものもあります。一方で、糖尿病網膜症は全身の病気やその管理状況が大きく関わります。
つまり、病気は遺伝だけで決まるわけではなく、年齢、全身状態、生活習慣などさまざまな要素もあわせて考えることが大事です。そのため、年齢のせいと決めつけず、見え方の変化があれば早めに眼科で相談することが大切だと思います。
病気としては僕もそうだと思います。
補足すると、片目の見えにくさを補うというのは脳だけでなくもう一方の目の働きでもあります。目は2つあり、片方の視野がもう片方の視野とオーバーラップしているため、症状の程度によってはカバーしてしまい、初期の変化は見逃しやすくなります。
お二人ともありがとうございます。
とても勉強になります。発症形式とどのように進行するかは、知っておいてほしい内容ですね。違和感があったら片目ずつ確認するというのも、簡単にできて有用ですね。
——40代から60代で発症しやすい目の病気はどの程度の頻度で発生するのですか?
まず緑内障は、日本では40歳以上の約5%、つまり20人に1人程度にみられるとされています。年齢とともに増えていき、60歳以上では1割を超えるとも言われています。
加齢黄斑変性は、日本では50歳以上でおよそ1〜2%程度と、頻度だけで見るとそこまで多い疾患ではありません。
白内障は少し性質が違っていて、加齢に伴う変化なので、60代で7〜8割、70代でほぼ全員に近い頻度でみられ、80歳以上ではほぼ必発とされています。
糖尿病網膜症は、糖尿病患者の3割程度に発症するとされており、糖尿病の増加とともに患者数も増えています。全体の人口で見ると数%程度です。
老眼は40代前後から始まりますが、これは病気というよりも、生理的な加齢変化です。
いずれの頻度も無視できない数字ですね。ターゲット層はそれぞれの症状を理解し、最低限の受診の判断は知っておいた方がよさそうですね。
ここまでで、40〜60代の視力低下では、老眼・白内障のような加齢変化と、緑内障・糖尿病網膜症・加齢黄斑変性のような見逃したくない病気を分けて考えることが大事、という点が整理できたと思います。
「40〜60代で視力が低下する原因は?加齢変化と病気の違い」のまとめ
- 40〜60代では老眼・白内障が多い
- 緑内障などの見逃したくない病気もある
- 片目ずつ見え方を確認することも有用
視力低下を防ぐには?原因ごとの日常対策と受診の目安
——40代から60代の視力の低下を防ぐ方法はありますか?
まずは老眼、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性について、「日常でできる予防・進行予防」と「受診や検診のポイント」を、実際の外来でどう説明するかも含めて教えていただけますか?
老眼ですが、日常でできることとしては、無理に見続けないことが最も重要です。近くを見る作業は適度に休憩を挟み、スマートフォンや読書は30〜40cm程度の距離を保ちます。また、暗い場所での近業は負担が大きいため避け、必要に応じて早めに老眼鏡を使用します。
受診や検診のポイントとしては、40歳以降で手元の見えづらさを感じた場合が目安になります。市販の老眼鏡が合わない場合や、急激に見え方が変化した場合には、他の疾患の可能性も含めて眼科での評価が必要です。
——白内障はいかがでしょうか?
進行予防としては、紫外線対策、たとえばサングラスや帽子と、禁煙が特に重要です。加えて、糖尿病がある場合は血糖コントロールも進行に影響します。
受診のポイントは、「かすみ」「まぶしさ」「夜間の見えづらさ」などの自覚症状が出てきたタイミングです。視力の数値よりも、日常生活で困っているかどうかが重要であり、生活に支障を感じたら受診・手術検討の目安となります。
——緑内障の予防法も教えてください!
緑内障とすでに診断されている方の日常で最も重要なのは、点眼の継続です。自己判断で中断しないことが進行予防の中心になります。また、極端な長時間のうつ伏せ姿勢などは避けることが望ましいです。
未診断の方の受診や検診のポイントは40歳以上で一度も検査を受けたことがない場合は眼科検診を受けることですね。
特に家族歴がある場合は定期的な検査が重要です。症状が出てからでは進行していることが多いため、「無症状でも受診」が基本になります。
——糖尿病網膜症についてはどうですか?
糖尿病網膜症は、進行予防の中心は血糖コントロールであり、これに加えて血圧や脂質の管理、禁煙も重要です。全身管理も大切です。
受診のポイントとしては、糖尿病と診断された時点で症状がなくても眼科受診が必要です。その後も定期的なフォローが不可欠であり、見え方に異常を感じてからでは進行している可能性が高いため、無症状での受診が重要です。
——加齢黄斑変性症の進行抑制と受診の目安を教えてください!
最後に加齢黄斑変性ですが、進行予防として最も重要なのは禁煙です。加えて、ルテインやゼアキサンチンのサプリなども一定の意義があります。日常的には片目ずつ見え方を確認する習慣を持つことが有用です。
受診のポイントは、「線が歪む」「中心が見えにくい」といった症状が出た場合ですね。この時点では様子見をせず速やかに受診が必要です。早期治療が視機能の維持に直結するため、受診のタイミングが極めて重要な疾患です。
緑内障の点眼継続については、症状が改善しても医師の指示があるまで継続すると考えるのがよいでしょうか。よくなったから勝手にやめてしまうという人はいそうですよね。
喫煙が視力低下につながることは一般的には知られていないと思うので、禁煙の重要性も再認識してもらいたいですね。
はい、その理解でよいと思います。
緑内障点眼は、眼圧をコントロールして緑内障が進行しないようにするために継続する治療と考えるのが基本です。
特に緑内障は、初期から中期では自覚症状に乏しいことも多く、「見え方が変わらない=治った」というわけではありません。
そのため、自己判断で中断せず、原則として医師の指示があるまで継続することが重要です。
一方で、しみる・充血する・かすむ・点眼回数が負担になるなど、継続が難しい事情があれば、薬剤変更や治療方針の見直しも含めて眼科で相談することが大切だと思います。
ここまでで、老眼は「無理に見続けない・早めに老眼鏡を使う」、白内障や加齢黄斑変性は「禁煙や紫外線対策」、緑内障は「無症状でも検査・点眼は自己判断で中断しない」、糖尿病網膜症は「血糖管理と定期受診」が大切、という点が整理できたと思います。
「視力低下を防ぐには?原因ごとの日常対策と受診の目安」のまとめ
- 老眼は無理に見続けず、必要なら老眼鏡を使う
- 緑内障や糖尿病網膜症は無症状でも受診が大切
- 禁煙や紫外線対策は一部疾患の対策になる
視力低下を招くNG行動とは?誤解されやすい行動も整理
——視力低下を招くNG行動はありますか?
加齢黄斑変性については、喫煙がその重要なリスク因子と明確に報告されていますね。
加齢や遺伝だけでなく、喫煙のような生活習慣も発症に関わり、進行すると中心視力の低下につながる疾患なので、禁煙はかなり大事だと思います。
視力低下を招くNG行動は主に近くのものを見続けることと紫外線です。
まずは、近くでものを見ることです。30cm以内で長時間見続けることが近視や眼精疲労の原因になりますので、20-20-20ルールと姿勢を正すことが推奨されています。
20-20-20ルールは、20分に1回、20秒間、20フィート(約6m)先を見て目を休めることです。
これに関連して、テレビの見過ぎや暗いところでの読書などが取り上げられますが、実はテレビの見過ぎや暗いところでの読書は、目が悪くなるというよりも、眼精疲労で疲れを感じているだけで、休めれば見え方は変わらないはずです。
ただ、暗いところだと距離は近くなるので、暗いことというよりも、距離が近づくことが視力低下につながるということは、もっと知られてよいと思います。
ちなみに、ブルーライトは目に悪いというのは誤解ですね。
ブルーライトは太陽光からも出ていますから、ブルーライトカットをしても目はよくなりません。
紫外線は目の表面やレンズなどに影響するため、ドライアイや白内障などの目の病気になりうるため、紫外線カット機能のあるメガネやサングラスが推奨されています。
生活習慣病も、自覚がないまま視力低下が進む原因になります。
あとはコンタクトレンズの不適切な使用も挙げられるかと思います。
コンタクトは気軽に使われがちですが、実は高度管理医療機器です。「少しくらい大丈夫」の自己判断が、視力低下につながることがあります。
つけたまま寝る、決められた装用時間を守らない、手洗いせずに触る、保存液を注ぎ足す、ケースを清潔に保たない、痛みや充血があるのに使い続けるなどは不適切使用にあたります。こうした使い方で角膜障害や感染症を起こし、視力が元に戻らなくなることがあります。
ありがとうございます。
とても大事な補足までいただけて、かなり整理できたと思います。
「視力低下を招くNG行動とは?誤解されやすい行動も整理」のまとめ
- 近すぎる距離で見続けることは避けたい
- ブルーライトで目が悪くなるとは限らない
- コンタクトの不適切使用は視力低下につながる
- 生活習慣病は視力低下の原因になり得る
低下した視力は回復できる?目薬・サプリ・トレーニングの考え方
——低下した視力を回復させる方法はあるのでしょうか?
一般の方は、「目薬・サプリ・トレーニングで視力は回復するのか?」「回復できるものと、できないものの違いは何か?」が気になると思うのですが、先生方はどのように説明されているでしょうか?
原因を治療できる視力低下かどうか、これがまず大切です。
原因があればそれを治療することで、視力は元の状態、つまり病気がないころに近づくと考えてください。
一般的に視力回復というと、治療可能な病気がない状態の人が、目薬やサプリ、トレーニングをして視力がよくなることを期待されます。
しかし、基本的にはそれらで視力がよくなることはありません。でも、トレーニングなどは意識的に近くを見る時間を減らすため、一時的な近視、いわゆる仮性近視を解消するきっかけにはなるかもしれません。
また、サプリや一部目薬もドライアイに効果的な場合があり、その場合は見え方を改善する可能性があります。
そういう一部の状態を見極めるのは一般の方には難しいので、害のない範囲で試すのはよいと思いますが、まずは眼科を受診して診断を受けるようお伝えしています。
「原因を治療できる視力低下かどうかをまず見極めることが大切」という点は、一般の方にもとても伝わりやすいと思いました。
そのうえで、目薬・サプリ・トレーニングで改善が期待できるケースと、基本的には難しいケースを分けて考える必要がある、という理解で良さそうですね。
K先生のおっしゃる通りで、「視力回復」というと、視力が元通りになることをイメージされる方が多いと思います。しかし、視力回復の意味は原因によって異なります。
一時的に目の調節がうまく働いていない場合や、ドライアイなどで見え方が不安定になっている場合には、生活習慣の改善や治療によって見え方が改善することがあります。
一方で、緑内障で失われた視野や、進行した糖尿病網膜症などでは、完全に元へ戻すことが難しい場合もあります。
見え方だけで原因を判断するのは非常に難しいため、まず眼科で検査を受けることで、回復が期待できる視力低下なのか、元に戻すことよりも進行を抑えることが大切な視力低下なのかが分かりやすくなると思います。
K先生のご意見とあわせて、「視力回復」といっても原因によって意味が異なり、改善が期待できるものもあれば、元に戻すことより進行を抑えることが大事なものもある、という点がとてもよく整理できたと思います。
「低下した視力は回復できる?目薬・サプリ・トレーニングの考え方」のまとめ
- 視力回復は原因を治療できるかで異なる
- 目薬やサプリで基本的に視力がよくなるわけではない
- 戻すより進行を抑えることが大切な病気もある
座談会まとめ
今回の座談会では40代から60代にみられる視力低下の原因や予防方法、対策をお届けしました。
最後に座談会でわかったことをまとめておきますね!
加齢変化と病気を分けて考える:
40〜60代の視力低下では、老眼や白内障のような加齢変化と、緑内障など治療や経過観察が必要な病気を分けて考えることが大切です。
無症状でも受診が必要な病気がある:
緑内障や糖尿病網膜症は、症状が出てからでは進行していることがあります。40歳以降の検査や、糖尿病診断後の眼科受診が一つの目安になります
近くで見続ける習慣に注意する:
暗い場所そのものよりも、暗いことで見る距離が近くなる点に注意が必要です。近くを見る作業では休憩や姿勢も意識するとよさそうです。
自己判断で治療を中断しない:
暗い場所そのものよりも、暗いことで見る距離が近くなる点に注意が必要です。近くを見る作業では休憩や姿勢も意識するとよさそうです。
視力回復は原因によって異なる:
暗い場所そのものよりも、暗いことで見る距離が近くなる点に注意が必要です。近くを見る作業では休憩や姿勢も意識するとよさそうです。
このように、AIMEDでは皆様から寄せられた質問を医師3名で深掘りしています。皆様も気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください!ご質問をお待ちしています!
【参考文献】
あなたの気になることを
質問してみませんか?
記事の執筆や監修依頼はこちら