子どもの発熱やケガ|病院にいくべき?様子をみるべき?受診してよかった症例や判断ポイントを小児科医が検討

子どもの発熱やケガ|病院にいくべき?様子をみるべき?受診してよかった症例や判断ポイントを小児科医が検討

監修

五嶋 嶺 医師

五嶋 嶺 医師

2015年 名古屋大学医学部医学科卒業
2年の初期研修後、大阪母子医療センターで小児科研修を実施。小児神経領域での専門研修、地域基幹病院での一般小児科診療経験を経て、2023年より同センターの救急部門に従事開始。2024年に同センターに新設された「救急・総合診療科」の立ち上げメンバーの1人として、院内の救急診療だけでなく、地域の子ども向けセミナーや、住民へのBLS講習会など、地域の子どもたちが安心して楽しく暮らすための活動を積極的に行っている。
日本専門医機構認定小児科専門医、PALS(小児二次救命処置法)プロバイダー

イントロダクション

今回寄せられた質問は「子どもを病院に連れていくべきかどうか悩んだときはどうすれば良いの?」です。

お子さんは急な発熱や突発的なケガにみまわれることが多く、その都度受診すべきかどうか悩んでしまいます。
特に休日や夜間は、すぐに受診できる医療機関が少なく、「この症状や状態はどうすれば?」と悩む保護者の方も少なくありません。

そこで、AIMEDの小児科医2名と小児麻酔科医が、受診してよかったケースや様子見でも問題ないケースなどを挙げながら、「受診の判断ポイント」を検討しました。

【参加医師の自己紹介】

ごっしー先生@小児科
2015年医師免許取得。都市部の子ども病院に所属。当直や急病センターで子どもの病気やけがの相談を受ける機会が多い。2児の父でもあり、家庭内で受診判断に迷う経験もしている。

Drチルチル先生@小児科
2021年医師免許取得。関東の総合病院勤務。夜間・休日の受診判断の難しさを日々実感している。

ゆき先生@小児麻酔科
麻酔科専門医取得後、小児麻酔科医として小児病院で勤務。2012年医師免許取得。
緊急手術やPICU症例に関わる中で、「受診のタイミング」の重要性を強く感じている。2児の母でもある。

受診してもらってよかった!と小児科医が感じた症例

——受診するかどうか悩んでいたけれど受診して正解だったケースはありますか?

週末の深夜、生来健康な2歳くらいの男の子がwalk inで救急外来を受診しました。

※walk in:救急車を使わず徒歩や公共交通機関、自家用車などを使い来院する救急患者

風邪が治った直後に親戚の集まりがあり、日中はいつも以上にはしゃいで遊び、夕食もあまり食べずに寝てしまったとのことでした。

そのまま朝まで眠り続けるかと思ったら、夜になって嘔吐

その後も寝付けず、いつもと様子が違うということで受診されました。

診察中は視線が合うのですが、どうもぼんやりしていて、うとうとしている様子がありました。

夜中だったので「眠いだけ」とも説明できそうでしたが、反応が乏しいと感じられたため、念のため簡易血糖測定を行いました。

すると、血糖は20mg/dL。

通常、血糖値は70〜120mg/dL程度になるよう厳密に調整されており、50mg/dLを下回ると危機的状況です。

急いで点滴を確保し血糖補正を行うと、血糖上昇とともに活気が出て、おしゃべりも始めました。

低血糖による意識障害だったと分かり、本当に受診してもらって良かったと思いました。

その後詳しく調べましたが、生まれつきの体質の問題はなく、

風邪で数日食事量が落ちていたところで1日中遊び、夕食も摂らなかったことで血糖が維持できなくなったものと考えられました。

嘔吐は1回のみでしたが、あのまま「眠いだけ」と自宅で様子を見ていたら、

朝までにけいれんが起きたり、低血糖脳症に至っていた可能性もあったと思います。

低血糖は本当に怖いですね。

入院中、術後で鎮痛薬がよく効いて眠っていると思っていたら、実は低血糖が隠れていたという話を聞いたことがあります。

成人ですが、麻酔後の覚醒不良が低血糖だったという症例もあります。

意識障害の際に低血糖をルールアウトするのは鉄則ですが、医療者でも見逃してしまうことがあります。

やはり親御さんの「何かおかしい」という感覚は大切だと感じます。

私は急性腹症(※急激に発症した激しい腹痛)で怖い思いをしたことが何度もあります。

腹痛や嘔吐はよくある症状なので、胃腸炎として様子を見ていたら、実は絞扼性イレウスでショック状態となり救急搬送。

緊急手術で一命を取り留めましたが、もう少し判断が遅れていたらと思うと冷や汗が出ます。

お昼までは元気だったという半日程度の経過で急変することもあり、改めて怖いと感じました。

——チルチル先生も受診してよかったと感じる症例を経験していますか?

急性腹症は私も肝を冷やすことが多いです。

小児では便秘や胃腸炎が圧倒的に多いので、そうでなかった場合に誤診してしまうことがあります。

腹部は画像検査をしないと確定診断が難しいことも多く、私は「治らないときは翌日も受診してください」と必ず伝えるようにしています。

実際、胃腸炎として経過を見ていたら虫垂炎だったという経験もあります。

急性腹症は本当に怖いですね。

私も腸穿孔や卵巣捻転、さらには劇症型心筋炎の初発が腹痛だった症例などを経験しており、慎重に診察するようにしています。

私の場合は、

「⚪︎⚪︎という症状が、これくらいの期間続いたら必ずかかりつけを受診してほしい」

「症状が強くなる/新しく△△という症状が出たら、夜中でもすぐに再診してほしい」など、

再診の目安を具体的に伝えることを大事にしています。

「受診してもらってよかった!と小児科医が感じた症例」のまとめ

  • 眠いだけに見える意識変容の中に、低血糖など怖い病気が潜んでいることがある。夜間は判断を鈍らせやすいが、「いつもと違う」は重要なサイン。
  • 腹痛や嘔吐は頻度が高い症状だからこそ、重篤疾患を見逃しやすい。胃腸炎や便秘として経過を見ていた症例のなかに重い疾患が含まれていることもある。
  • 親の「何かおかしい」という直感と、症状が改善しない経過は、再評価の重要な根拠になる。どんなに優れた医師でも、最初は診断をつけることが難しい場面があり、違和感を軽視せず、「どんな時に再診するべきか」を考える姿勢が命を守る分岐点となる。

病院を受診すべきか迷ったら誰に相談する?AIに質問してもよい?

——子育てをしているなかで、病院に行くべきか、自宅で様子をみた方が良いのかの判断に迷う場面というのはしばしばあります。そんなときは、どこに相談をしたらよいのでしょうか。

私が勤めているエリアだと、#8000の子ども医療電話相談事業に相談してから来られる方や、直接急病センターに電話相談をして、受診すべきか確認される方が一定数いらっしゃいます。

最近はアプリやウェブサイトで、チャート式に受診の要否を判断できるものもありますが、

皆様のおすすめはありますか?

私は初療をみている立場ではなく、親としての経験ですが、同じく電話相談事業にお電話したことがあります。

また一次救急に相談したり受診したりもしますが、自宅近くの一次救急は21時頃に閉まってしまうので、「ここから夜は長いな」と感じたこともあります。

——電話相談事業では適切なアドバイスを受けられるのでしょうか?

電話相談事業については、救急外来を受診されるご家族がよく利用されている印象がありますが、事業者側も電話だけだと判断が難しく、「現時点では家で様子を見ても問題ない」と強く思えるケース以外は受診を勧めることになるため、病院受診を勧める閾値はかなり低い印象を受けます。

最近は365日診療しているクリニックやオンライン診療も増えてきていますので、まずはそういったところで医師に相談するのも、一つの選択肢かもしれません。

21時に閉まるのは不安になりますよね。

そうなると「次はどこに行けばいいのか」となりますが、それを調べること自体が大変だと感じている方も多い印象です。

オンライン診療はエリアを問わず24時間受診できる点で、「迷うなら家から受診」という選択肢になり得ると思います。

個人的には、もう少し質の担保が進めば、より勧めやすくなると感じています。

オンライン診療などの情報も、平時から調べておかないといけないと、親の立場として改めて感じました。

備えがあるかどうかで、迷ったときの選択肢は大きく変わると思います。

——AIに相談して受診されるケースに出会ったことはありますか?

先日の夜間診療で、「AIに相談したら今すぐ受診した方がいいと言われた」という主訴の方がいらっしゃって、時代の変化を感じました。

実際にはAIが示した疾患ではなく、なぜ違うのかを説明するのに苦労したのも印象に残っています。

最近の研究でも、一般市民が大規模言語モデルを使って医療相談をした際に、どの程度正しい診断にたどり着けるかが検討されていますが、そもそも適切に相談すること自体のハードルが高い結果でした。

私は、AIに相談して受診してきた患者さんにはまだ出会っていません。

ただ、そういう方はAIへの信頼度が高いと思うので、AIが誤った情報を出している場合、説明は大変そうだなと感じます。

私は麻酔科医ということもあり、AI相談をきっかけに受診されたケースはまだありませんが、麻酔の説明時には、AIやインターネットで調べて不安を抱えた状態で来られる方はよくいらっしゃいます。

AIは判断に迷う状況の時には安全域をとって「心配なら受診」を勧める傾向があると思いますので、不安になって受診される方は今後さらに増えるかもしれませんね。

「病院を受診すべきか迷ったら誰に相談する?AIに質問してもよい?」のまとめ

  • 電話相談事業は判断材料のひとつだが、受診を勧める閾値は低い(軽症でも受診を勧められる)と思っておく。
  • AIやインターネットで情報収集すると必要以上に不安が増幅されることもある。その情報が「自分の子どもの状況に当てはまるのか」「受診を勧める理由が具体的か」を見極めながら解釈する必要がある。
  • 子どもの急な体調変化や緊急時に備えて、夜間・休日に使える医療資源(一次救急・オンライン診療)を把握しておくべきである。

医療者が考える、受診を勧める症状・基準

——では、どのような状態であれば受診をした方がよいのでしょうか?症状や基準があれば教えてください。

自宅ではバイタル測定ができるわけではないので、数値化しづらい部分で受診を考える必要があります。

ぱっと見の本人のぐったり感は大切だと思います。熱が高くても、ご飯が食べられていれば大丈夫なこともありますし、顔色などをみて判断することは大事かなと思います。

私も同感です。PALS※でもPAT(Pediatric Assessment Triangle)が重要な最初のステップとして位置付けられていますが、見た目や触診だけでも、重症かそうでないかを判断するには十分な材料となることが多いです。

・ぱっと見の印象(ぐったりしているかどうか)

・呼吸の様子がおかしくないか

・手足が冷たくないか(末梢循環不全の兆候がないか)

以上の3点は、どのような病態でも共通する受診の目安になると思います。

※Pediatric Advanced Life Support(PALS):アメリカ心臓協会(AHA)が策定した重症の小児・乳幼児に対する救急蘇生法

皆様ありがとうございます。やはりPAT評価は大事ですね。一般の方にも直感的に伝わりますし、ぜひ広めたいところです。

——子どもの年齢や月齢によって受診の判断は変わりますか?

3カ月未満(特にワクチン未接種)の乳児の発熱は、可能な限りすぐに受診してほしいというのも伝えたいです。もちろん軽症の風邪であることもありますが、重症化しやすい髄膜炎や敗血症、尿路感染症などの場合、「朝まで待とう」の数時間で急激に状態が悪くなることもあります。遠慮せずに受診してほしいと思います。

——外傷を診ることはありますか。すぐに受診した方がよい怪我の基準など、思い当たるものはありますか。

外傷はあまり診ることはないのですが、腹部外傷などはPATがやはり重要になるのではないかと思っています。

外傷診療は行っていませんが、集中治療のお子さんで見聞きはします。特に怖いのは頭部外傷です。数時間の経過で進行することも多く、嘔吐や意識障害などの症状が出てしまってからでは命に関わったり、重篤な後遺症を負ってしまうこともあります。

どのタイミングで受診するかという判断が重要な疾患ですが、その判断がとても難しい病態でもあります。

確かに外傷であってもPATでの評価は大事ですね。

水筒や自転車のハンドルなどが腹部に当たって、気付かぬうちに腹腔内出血になっている場合は、受傷直後は元気でも、PATで違和感を感じて初めて気付かれることもあります。

頭部外傷は非常に難しいですね。怪我を負った状況や症状から頭部CTを撮るべきかを判断する指標(PECARN、CATCH、CHALICEと呼ばれるアルゴリズムなど)はありますが、わずかな線量ではありますが被曝の影響もあります。また、CTを撮ったからといって、遅れて顕在化するような出血などの場合、100%分かるわけではありません。

当院では、頭部外傷で受診された方には、72時間を目安に以下の症状に気を付けていただくようお伝えしています。

・明らかなけいれん、意識障害が出る

・手足や体の動きがおかしい

・繰り返し嘔吐する

・頭や首の痛みが悪化する

・顔色が悪い、非常に機嫌が悪い、食事やミルクを欲しがらない

・何か普段と様子が違う

明らかに出血しているなどがあれば迷わず受診されると思いますが、そうでなくても、ご家族の「何かおかしい」は受診していただいてよい目安になるかもしれません。

「医療者が考える、受診を勧める症状・基準」のまとめ

  • 自宅ではバイタル測定が難しいため、ぐったりしている・呼吸の異常・手足の冷たさといった異常の有無を確認する
  • 軽い風邪であることも多いが、髄膜炎・敗血症・尿路感染症など重症感染症の可能性もある。短時間で急激に悪化することがあるため、様子見をせず医療機関を受診することが推奨される
  • 頭部外傷は時間が経ってから症状が出る場合があり、嘔吐・意識障害・けいれんなどに注意が必要。腹部外傷でも一見元気でも内部出血の可能性がある。「普段と様子が違う」という家族の直感も重要な受診の判断材料となる。

自宅でできる事故・怪我の予防

——自宅で、事故や怪我を予防するためにどのようなことに気を付けるとよいでしょうか?

小児病院に勤務していると家庭内の事故はたくさんあるのだと実感します。

誤飲・誤嚥、転落、熱傷などは、手術室に来て処置や手術が必要となることもある事象です。

家庭内事故は本当によく起きますよね。なかなか幅広いので一概には言えませんが、手に取れる場所に危険なものは置かないというのが基本かなとは思っています。

私も家庭内の事故で受診された方には、家庭での事故防止について書かれた資料をおすすめすることがあります。

また、発行自治体にもよりますが、母子手帳に家庭内で注意してほしい状況などが書かれていることも多いので、乳幼児健診の際に一読していただくようお伝えしています。

タバコや内服薬など危ないものはしっかりと片付けてもらうというのが大前提ですが、「今までは届かなかったけれど、掴まり立ちができるようになってテーブルの上のものを誤飲してしまった」というケースも後を断ちません。

自宅では気をつけていても、祖父母や友人の家に遊びに行った際に誤飲してしまうこともありますし、日頃から「子どもが手の届く範囲」を意識することが大切かもしれません。

——「意識していなかったけれど、こんな家庭内での怪我や事故もあるから気をつけた方がいい」と思ったケースはありますか。

小学生が友人と張り合っておもちゃを飲み込んでしまい、手術まで必要になった症例を経験しています。

小学生でも、ふざけて誤飲することがあるというのは、自分の子育てでも意識するようになりました。

子どもの手が届く範囲は、大人の想像を超えてくるというのはよく感じます。

とても難しいことですが、目を離さないということが基本になりますよね。ただ、子育てをしているとそれが難しい場面も多く、親御さんのお気持ちもよく分かります。

また、家庭内での怪我として意外と多いと感じるのが、ソファーで飛び跳ねていたり、ダイニングチェアから落ちたりといった、日常的な場面での骨折です。

いわゆる「こどもロコモ」と呼ばれている状況で、昔に比べて軽微な外傷でも骨折してしまうお子さんが増えていると言われています。

「こどもロコモ」という表現は初めて聞きました。

ご家族に説明する際にもイメージが湧きやすくて良い言葉かもしれませんね。

「自宅でできる事故・怪我の予防」のまとめ

  • 家庭内事故では誤飲・転落・熱傷が代表的で、医療現場で手術や処置が必要になるケースがある。
  • 事故予防の基本は「子どもの手が届く場所に危険なものを置かない」ことだが、子どもの行動範囲は想像以上に広がるため注意が必要。
  • ソファーで飛び跳ねたり、ダイニングチェアから落ちたりといった日常的な場面でも骨折することがある。こうしたケースが増えている背景として、「こどもロコモ」と呼ばれる子どもの運動機能低下が指摘されている

座談会まとめ

今回の座談会では、子どもの病気や怪我で、緊急受診をした方がよい症例や判断のポイントを検討しました。座談会のまとめはこちらです

子どもの急な体調変化では「いつもと違う様子」を見逃さないことが重要
眠そうに見えるだけの意識変容の中に低血糖が潜んでいることや、腹痛・嘔吐の背後に重篤疾患が隠れていることもある。親の「何かおかしい」という直感は受診判断の重要な手がかりとなる。

受診判断では“見た目の異常”が重要な指標になる。
ぐったりしている、呼吸の様子がおかしい、手足が冷たいなどの所見は重症度を判断する重要なサインである。特に3か月未満の乳児の発熱や頭部外傷などは早めの受診が望ましい。

家庭内事故は予防できるものも多く、環境づくりが重要
誤飲・転落・熱傷などは家庭内で頻繁に起こる。子どもの手の届く範囲に危険なものを置かないことや、日常的な遊びや家具からの転落にも注意することが事故予防につながる。


保護者の方が感じる「いつもと違う様子」は、重要は判断ポイントになりそうです。また、PATの判断基準も参考になりますね!
・ぱっと見の印象(ぐったりしているかどうか)
・呼吸の様子がおかしくないか
・手足が冷たくないか(末梢循環不全の兆候がないか)

◼️ AIMEDでは、このように読者の皆様から寄せられた質問に対して、医師3名が座談会を開き回答いたします。皆様もわからないこと、日頃から気になっていること、病院では聞きにくいことなどがございましたら、お気軽に質問をお寄せください

参考文献

  1. 子ども医療電話相談事業(♯8000)について
  2. Reliability of LLMs as medical assistants for the general public: a randomized preregistered study(Nat Med. 2026 Feb;32(2):609-615.)
  3. PALS(Pediatric Advanced Life Support)- American Heart Association
  4. こども家庭庁 こどもの事故防止ハンドブックについて



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