集合体恐怖症は病気?ゾワッとする感覚と、相談・治療の考え方を精神科医と当事者医師が語り合いました
監修
前田 佳宏 医師
和クリニック 医院長2013年島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院での初期研修後、同大学精神科医局に入局。
東京警察病院、国立精神・神経医療研究センターなどでの勤務を経て、2021年に和クリニックを開業。
精神保健指定医
イントロダクション
今回のAIMED座談会のテーマは「集合体恐怖症」です。「穴やつぶつぶの集まりを見てゾワッとするのは病気なのか」「怖いのに見たくなるのはなぜか」という疑問について、精神科のまえまえ医師と、自身もつぶつぶが苦手だという皮膚科のたまこ医師が話し合いました。皮膚のブツブツが気になるときの診察、苦手な画像との付き合い方、相談や治療を考える目安まで、自身の感覚や診療経験を交えて考えます。
【参加医師の自己紹介】

まえまえ先生@精神科
精神科医、精神保健指定医。東京大学医学部附属病院や東京警察病院、国立精神・神経医療研究センターなどでの勤務を経て、現在はクリニック院長。児童精神科やトラウマの診療にも携わる。

たまこ先生@皮膚科
皮膚科医、皮膚科専門医。都内大学病院および総合病院勤務を経て現在は3つのクリニックで一般皮膚科および美容皮膚科に従事。自身もつぶつぶした見た目が苦手。
集合体恐怖症は病気?「苦手」と治療の境目は?
——穴の集まりを見ると鳥肌が立つ、気持ち悪くなるという集合体恐怖症ですが、これは病気なのでしょうか。先生は診察室でどう位置づけていますか。患者さんから相談されたご経験があれば、そのあたりも含めてお聞かせください。
つぶつぶ、苦手です。
たまこ先生も苦手なんですね。背景に使われるような模様でも、気持ち悪く感じるのでしょうか?
不思議と、つぶの大きさが揃っていなければ、気持ち悪さはあまりないんですよね。
先生の場合は、同じつぶつぶでも、大きさが揃っているかどうかで違うんですね。
先生の場合は、見た瞬間に「怖い」と感じるのか、それとも「気持ち悪い」「ゾワッとする」に近いのか、どんな感じでしょうか?
あと、ご自身が苦手だからこそ、診察で患者さんの「肌が気持ち悪い」という気持ちがわかる部分もあるのかなと思いました。そのような相談を受けることはありますか?
ゾワッとしますね。でも、気になって見たい気持ちもあるんですよね……。怖いもの見たさでしょうか?
はい、ヘルペスとか、水疱が集簇する皮疹を「気持ち悪い」とおっしゃることはあります。
ターゲット状というか、真ん中に陥凹や穴があるタイプだと、さらに気持ち悪さが増します(笑)。でも、見ちゃいます(笑)。
なるほど、真ん中にくぼみがあると、さらにゾワッとするんですね。それでも見てしまうというのも、気になるところです(笑)。
最初の「これは病気なのか」という話にもつながりますが、僕は、つぶつぶが苦手というだけで病気と考える必要はないと思っています。大事なのは、本人のつらさがどのくらいあるか、生活にどんな影響が出ているかですね。
見た瞬間にゾワッとしても、その後は普段どおり過ごせる場合と、頭から離れなかったり、避けるために生活が制限されたりする場合では、対応も変わってきます。
——たまこ先生の場合は、見終わるとわりと切り替わる感じですか?それともしばらくゾワゾワが残りますか?
わりとすぐ切り替わると思います。ヘルペスや帯状疱疹などのブツブツに関しては、ある程度慣れました(笑)。
診療で見ているうちに、ある程度慣れてきたんですね。
ちなみに「集合体恐怖症」は、DSM-5に独立した病名として載っているわけではないんです。ただ、診断基準を満たせば「限局性恐怖症」として扱うことはあります。
英国の研究では、質問票で約1割が該当したという結果もあります。けっこういるんですよね。でも、その人たち全員に治療が必要という意味ではないんです。
僕としては、やっぱり「本人がどれくらいつらいか」「生活で困っているか」が大事だと思っています。苦手なだけなら無理に治す必要はないし、困っているなら相談していい、ということですね。
たしかに、治療が必要かといわれると、生活に支障がない方が多い気がしますね。例えば病的だった場合は、曝露療法のように慣れさせることが治療になるのでしょうか?
そうですね、曝露療法は選択肢になります。本人と相談しながら少しずつ取り組んで、「不快ではあるけど、対処できる」という経験を重ねていく感じですね。
集合体恐怖症ではまだ研究は少ないですが、曝露を含む認知行動療法で改善した報告もあります。僕としては、苦手でも必要なことができるようになるのが大事だと思っています。
「集合体恐怖症は病気?「苦手」と治療の境目は?」のまとめ
- 苦手というだけで病気と考えず、本人のつらさや生活への影響を重視する
- 質問票で該当することと、治療が必要であることは同じではない
- 曝露療法は選択肢の一つだが、本人と相談し、少しずつ取り組む
なぜゾワッとする?怖いのに見たくなるのはどうして?
先ほどの「ゾワッとする」という感覚も、もう少し聞いてみたいです。
たまこ先生の場合、皮膚の病気のようなものを連想して気持ち悪くなる感じはありますか?それとも、何かを考えるより先に、見た瞬間にゾワッとする感じでしょうか?
ゾワッとするのは、見た瞬間です。なので、病気はまったく連想していないと思います(笑)。
見た瞬間なんですね!先生の感覚だと、病気への心配より、見た目そのものが受けつけない感じなんですね。
研究でも、集合体恐怖症は怖さより嫌悪感が強いという報告があります。感染症や寄生虫を避ける反応が、似た模様にも出てしまうんじゃないか、という説もありますね。そういう説明なら、本人が病気を連想していなくても起こることになります。ただ、模様の見え方が関係するという説もあって、原因はまだはっきりしていません。
嫌なのに見たり、確認したりしてしまう、という相談は僕も受けることがあります。理由はいろいろだと思いますが、不快に感じる一方で「どうなってるんだろう」と確かめたい気持ちもあるのかもしれませんね。見てしまうことと、平気でいられることは別なんだと思います。
自分の肌だと、気になって何度も見てしまうこともありそうですね。先ほどの、皮疹を「気持ち悪い」とおっしゃる患者さんには、たまこ先生はどんなふうに説明されているんですか?
たしかに、本能的に「うわっ、なんだろう?」と気になって、注視しちゃっている感じなのかなと思います。
「ハスコラ」と調べるとゾワゾワする画像がたくさん出てくるので、先祖はこういうブツブツした病気にかかったか、こういう恐竜みたいなやつにやられたのかもしれません(笑)。
患者さんには「わかりますー、気持ち悪いですよね。でも治りますので大丈夫ですよ」と、共感を示しています(笑)。特に恐怖症に対しての説明はしていないですね。
あと、集合体ではないですが、
・びっくりする
・怖いけど見たくなる……
という流れが、共有した動画の猫の反応にも現れていて、すごくわかるなあと思いました(笑)。
この猫がびっくりしている機械にも、集合体に近い怖さを感じたので、目のように見えるパターンや模様が気持ち悪いのかもしれません。
たまこ先生の「わかりますー」は実感がこもっていますね(笑)。自分も苦手な先生にそう言ってもらえると、話しやすそうです。
ハスコラ、ありましたね……。ああいう加工画像が不意に出てきたら、苦手な人にはきついですよね。猫の話も、怖いけど気になる感じはわかります(笑)。
「なぜゾワッとする?怖いのに見たくなるのはどうして?」のまとめ
- 怖さより嫌悪感が強いという報告もあるが、原因はまだはっきりしていない
- 嫌なのに見たり確かめたりすることと、平気でいられることは別
- 患者さんのつらさに共感することも、診療での関わり方の一つ
肌のブツブツが気になるとき、ネット画像だけで判断できる?
自分の肌のブツブツだと、気になってネットで調べたくなるのもわかります。ただ、似た画像を見つけて「これかも」と思うと、かえって心配になることもありますよね。僕も、調べても安心できず何度も確認してしまうという話は聞きます。
たまこ先生のところにも、画像を調べて「この病気では?」と来られる方はいますか?画像だけで判断するのと、実際に診察するのとでは、どんなところが違うんでしょう?
たしかに、「これかも」と思っていらっしゃることは多いですね。特に多いのが帯状疱疹です。「体に一周すると死んでしまう」といった迷信も昔からあるようです。また、CMで疾患の認知度が上がっていることも、よくお尋ねいただく要因かと思います。
見た目だけでなく病歴などからも推察していますし、画像だとわからない盛り上がりなど、立体感の違いもあります。おそらく患者さんよりも細かい箇所まで見ているので、そのあたりが実際の診察との違いですかね。ネットの画像は粗いことが多いので……。
帯状疱疹、多いんですね。「一周すると死ぬ」まで聞いたら、そりゃ心配になりますね。
写真で似ているかどうかだけじゃなく、経過や実際の皮膚の状態も見て判断されているんですね。ネットで画像を見比べていても、そこはわからないですよね。
自分の肌だと、「何か悪い病気かも」という心配と、「このブツブツを見るのがつらい」という気持ちが両方あることもありそうですね。病気の心配がなくなっても、見た目の苦手さは残るかもしれません。
たまこ先生のところでは、病気としては心配のないブツブツでも、見た目が気になって相談されることはありますか?どんなものが多いんでしょう?
ブツブツ系ですと、水イボ、じんましん、尋常性疣贅あたりは、気持ち悪いという方が多いですね。
心配のないもので、見た目だけでということであれば、毛孔性苔癬、稗粒腫、扁平疣贅あたりも、気にされて受診する方が多いです。
毛孔性苔癬なども相談が多いんですね。病気として心配ないとわかっていても、ブツブツが苦手な人には気になりますよね。
「肌のブツブツが気になるとき、ネット画像だけで判断できる?」のまとめ
- 似た画像を見つけることで、かえって心配が強くなる場合もある
- 診察では見た目だけでなく、病歴や皮膚の盛り上がりなども確認する
- 病気への心配と、ブツブツの見た目のつらさは、両方あることもある
苦手な画像とはどう付き合う?治療や相談の目安は?
——集合体恐怖症の人は苦手な画像にどのように向き合えばよいのでしょうか?
集合体恐怖症との付き合いにおいて、僕としては、集合体の画像を見て「どこまで耐えられるか」で確かめるより、普段どんな場面で困るかを重視しています。見た瞬間はゾワッとしてもすぐ切り替えられるのか、あとまで気になって仕事や外出に響くのか。そのあたりを聞きたいです。
そう考えると、先生が最初におっしゃっていた「わりとすぐ切り替わる」というのは大事なところですね。
たまこ先生は、普段SNSなどで苦手な画像が出てきたとき、どうされていますか?すぐスクロールするなど、ご自身でやっている工夫はありますか?
自分は苦手な画像が出てきたときは、「うわっ」とは思いますが、スクロールして終わるとか、うっすら目を細めるなどしている気がします。
ちなみに、たまこ先生は周りの人にどう接してもらえるといいかも聞いてみたいです。
僕は、苦手だと言っている人に「これもダメ?」と画像を見せて試すようなことは、やめてほしいなと思います。本人にとっては、ふざけて済む話じゃないこともありますからね。
たまこ先生は、周りに集合体が苦手だと話すことはありますか?こうしてもらえると助かる、逆にこれはやめてほしい、ということはありますか?
集合体恐怖症の話になったら、苦手であることを話して盛り上がっちゃいます(笑)。「これ、気持ち悪いよね!」という感じで……。
たしかに、いきなり見せるよりも「見る?」と聞いてほしいかもしれません(笑)。
やめてほしいことは特にないのですが、毎日つぶつぶ画像を送りつけられたら、さすがに嫌になるかもしれません。
毎日送られるのは、さすがに嫌ですね。「見る?」という一言があるだけで、自分で選べますもんね。「見せる前に聞いてね」と具体的に伝えるのはよさそうです。
治療の話も少し補足すると、僕が気にするのは、避けるものが増えて生活が不自由になっていないかですね。SNSをスクロールして済むくらいなら、その付き合い方でいいと思います。食事や入浴がつらい、仕事中も思い出して集中できない、ということなら精神科で相談してもらったほうがいいですね。
診察では、感染しそうで怖いのか、見た目そのものが気持ち悪いのか、何度も確認してしまうのか、そのあたりを聞きます。同じ「ブツブツが苦手」でも、困っていることは人によって違いますよね。
治療では、まず生活の中で何ができるようになると楽かを一緒に考えます。例えば入浴を避けているなら、無理のない段階から取り組んで、「ゾワッとはするけど、お風呂には入れた」という経験を重ねていく感じです。強い不安やうつなどもあれば、薬を使うこともあります。
期間も幅がありますね。恐怖症の診療全般でいうと、数か月で楽になる人もいれば、年単位で付き合っていく人もいる、という感覚です。通院中も「前より外出できた」「気になっても仕事に戻れた」といった変化が、見ていくポイントですね。
「苦手な画像とはどう付き合う?治療や相談の目安は?」のまとめ
- 画像にどこまで耐えられるかより、普段の生活での困りごとに目を向ける
- 苦手な画像を見せる前に、本人に見るかどうかを確認する
- 食事や入浴、仕事などに支障があれば、その困りごとを精神科で相談する
周囲には何を伝えればいい?集合体が苦手な人へのメッセージ
周りに「大げさだな」とか「これくらい平気でしょ」と言われて、話しづらくなる人もいると思います。たまこ先生なら、同じように集合体が苦手で、周りにわかってもらえないと悩んでいる方に、どんな声をかけますか?
なるほど……。どのくらい恐怖で困っているか、生活の中で一緒にできることを増やせるよう、方法を考えていくんですね。
恐怖症には種類もあると思うのですが、生活に困るほどなど、重症度もさまざまですよね。
私は「気持ち悪いなあ」と思う程度で済んでいますが、生活に困る方など、さまざまなので配慮しないといけないなと思いました。
わかってもらえないと悩んでいる方には、どんなことに配慮してほしいか、まずは聞いてみますかね。
本人に聞いてみる、というのは大事ですよね。僕も「集合体が苦手」と聞いただけで、困り方までわかったつもりにならないようにしたいです。
伝える側も「画像を送る前に一言聞いてほしい」とか、「気持ち悪くなったら少し席を外したい」とか、してほしいことを具体的に言えると、相手も対応しやすそうですね。
僕から読者の方に伝えるなら、苦手さで生活に困っているときは、その困りごとをそのまま相談してもらっていい、ということです。「何を見るとつらいか」「そのせいで何ができないか」を話してもらえれば、そこから一緒に考えられます。
では最後に、たまこ先生からも、集合体が苦手でこの記事を読んでいる方へ一言いただけますか?ご自身も苦手な立場から、伝えておきたいことがあればぜひ。
「わかったつもりにならない」。これは恐怖症だけではなく、普段の診察でも心がけたいところだなと思いました。
読者の皆さまへ。恐怖の感じ方や生活への支障は人それぞれだと思いますので、決して変なことだと思わず、気軽に相談しても大丈夫だということを伝えたいです。また、会談の中で配慮してほしいことがあれば先に伝えるのも、生活しやすくするために大切なことかなと思いました。
まえまえ先生の精神科ならではのコメント、とても勉強になり、面白かったです。
ご自身の「苦手だけど気になって見ちゃう」というお話や、皮膚科で実際にどんな相談があるのかも聞けて、僕も面白かったです。
同じ集合体が苦手でも、笑って話せることもあれば、生活で困ることもある。その幅も伝わる記事になるといいですね。
「周囲には何を伝えればいい?集合体が苦手な人へのメッセージ」のまとめ
- 同じ「苦手」でも、感じ方や生活への影響は人によって異なる
- 困り方を決めつけず、どんな配慮をしてほしいか本人に聞く
- 相談するときは、何を見るとつらいか、何ができないかをそのまま伝える
座談会まとめ
今回の座談会では集合体恐怖症の当事者であるたまこ医師と精神科まえまえ医師の対談をお届けしました。座談会全体のまとめは下記のとおりです。
- 苦手さと生活への影響を分けて考える
- 病気への心配と見た目のつらさ
- 治療では生活の変化を見ていく
- 必要な配慮は本人に聞く
AIMEDでは、このように医師による対談や座談会を実施しています。読者の皆様から寄せられた疑問を徹底的に検証いたしますのでぜひ質問をお寄せください!
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