子どものワクチンはどうすれば?任意接種ワクチン中心に討論【任意:インフルエンザ・新型コロナ、定期:HPV】

子どものワクチンはどうすれば?任意接種ワクチン中心に討論【任意:インフルエンザ・新型コロナ、定期:HPV】

監修

江口 瑠衣子 医師

江口 瑠衣子 医師

2009年長崎大学医学部卒業
大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事
患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている
腎臓専門医・総合内科専門医

イントロダクション

インフルエンザや新型コロナ感染症などのワクチンは「子どもに接種させるべきかどうか悩む」という保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。定期接種ワクチンが多数あるなかで、さらに接種するワクチンが増えると多忙さが増します。また、安全性も気になるところです。
そこで、今回はワクチン業務に携わる医師ら3名に、打つべきか悩みやすいインフルエンザや新型コロナ感染症、HPV、そして渡航時のワクチン接種について質問をしました。

ワクチンの意義だけでなく、自分の子どもに打たせるかどうかという視点でも掘り下げていますので、ぜひご一読ください。

【参加医師の自己紹介】

DIO先生🦌総合診療医
2008年医師免許取得。内科から小児科まで幅広く診療を行っており、予防医療、特にワクチンに強い関心を持つ。

しまりす先生@腎臓内科
2009年医師免許取得。腎臓内科・一般内科を専門とし、成人の各種ワクチンに関与。小児のワクチンについては体験ベースで意見を交える。

Drチルチル先生@小児科
2021年医師免許取得。総合病院勤務で日常的にワクチン業務に携わっており、最新の情報にも明るい。

インフルエンザワクチン、子どもに毎年打たせる?

——子どものインフルエンザワクチンは毎年接種した方がよいのでしょうか?

私は総合診療医として、子どもから高齢者まで幅広く診ています。小児のインフルエンザワクチンについては、基本的に毎年打つべきと考えています。理由はウイルスが毎年変異すること。特に未就学児は重症化リスクが高いため、毎年の型に合った免疫を得る必要があります。インフルエンザ脳症や中耳炎などの合併症を防ぐ意味でも、ワクチンの意義は大きいです。

ただ、現場では「本当に意味があるのか?」という疑問もよく聞きます。その場合は、“完全に防げるわけではないが、軽く済む可能性が高まる”ことを丁寧に説明し、納得解を一緒に探るようにしています。

私も小児科医として、インフルエンザ脳症によって後遺症が残ったお子さんを何人も診てきた経験があります。だからこそ、インフルエンザワクチンは非常に重要だと感じています。発症予防だけでなく、重症化や入院リスクを減らす効果がある点は見逃せません。

また最近では、経鼻投与型の「フルミスト」も使えるようになり、注射が苦手な子どもにとっては受け入れやすくなってきています。こうした新しい接種法の選択肢があることも、ワクチンを勧めやすくなった理由のひとつです。

確かに診療の現場では「打っても意味がない」「かかったことがないから必要ない」という声をよく聞きます。でも、それは診断されていなかっただけかもしれませんし、症状が軽く済んでいた可能性もあると思います。

「打ってもかかる」ことへの懐疑には、感染を完全に防ぐのではなく重症化を防ぐというワクチンの本来の目的を、啓蒙していく必要がありますよね。

ちなみに、フルミストについては名前しか知らなかったのですが、うちの子どもは注射が大嫌いなので、選択肢があるのはありがたいです。

——フルミストは通常のワクチンと同様の効果が得られるのでしょうか?

フルミストについては、以前“不活化ワクチンより効果が劣る”という報告もありました。当診療所ではその懸念もあって、今は採用していません。チルチル先生、現場での印象はいかがですか?

確かに開発当初は保存や輸送の問題で効果が下がるといった指摘もありました。でも、改良が進んで、現在では注射型と同等の効果があるとされています。実際の臨床現場でも、フルミストだから重症化するという印象はありません。接種する側としても経鼻はとても楽なので、助かっています。

フルミストは「約1年間効果が持続する」といった情報も見かけました。注射じゃないし、子どもには特に良いですね。

ドイツでは6種混合ワクチンがあるという話を聞いて以来、日本でも実現しないかなと思っているんです。打つ回数が減れば、親にも子どもにも負担は少なくなりますよね。モデルナ社がインフルエンザとコロナの混合mRNAワクチンを開発中とも聞きますし、ワクチンの進化はこれからも目が離せません。

6種混合、すごいですね。打つ回数が少ないのは本当に助かります。現場としてもありがたいです。

「インフルエンザワクチン、子どもに毎年打たせる?」のまとめ

  • インフルエンザウイルスの変異に対応するため、毎年のワクチン接種は有効と考える医師が多数。
  • フルミストのような新しい投与法の選択肢は、接種しやすさの観点から評価されているが、効果や採用には議論もある。
  • インフルエンザワクチンは重症化予防が目的であるととらえるとよい。         

新型コロナワクチン、小児への接種をどう考える?

——新型コロナワクチンも子どもに打たせた方がよいですか?

小児への接種についても、基本的には打ったほうがよいと考えています。確かに小児の重症化率は低いですが、稀に重症肺炎やMIS-C(小児多系統炎症性症候群)などのリスクもあり、社会全体としての感染予防という観点でも接種の意義はあります。ただ、発熱など副反応への不安、またウイルスの弱毒化によって「打つ必要があるのか」と迷う保護者の気持ちも理解できます。その家庭の状況や価値観に寄り添うことが大事だと思っています。

また、基礎疾患のある子や喘息が重い子、高齢者と同居している場合は、接種のメリットがより大きいと考えています。一方、私のような地方では小児ワクチンを取り扱っている施設自体が少なく、導入にはコストもかかるため現実的には難しいことも多いです。

私も基本的にはCOVID-19ワクチン推奨派ですが、インフルエンザワクチンと比べると優先度はやや下がる印象です。日本小児科学会は生後6か月〜17歳のすべての小児に接種を推奨しています。その理由には、今後も流行の可能性があること、小児でも重症化(脳症や心筋炎など)があること、安全性もある程度確認されていることなどが挙げられます。ただし、健康な子どもへの接種の必要性については、議論の余地があると感じています。個々の状況に応じて、メリット・デメリットを丁寧に検討する姿勢が大切だと思います。

それに関連して私が不思議に思っているのは、重症化率や後遺症率を考えると、コロナ感染の方がインフルエンザより重大と感じる場面もあることです。実際にはどうなのでしょうか?

先生方と同じで、私も基本的に接種推奨の立場です。ただ、小児への接種は子ども一人ひとりのリスク、家庭の事情、地域の医療体制などに応じて柔軟に考える必要があると思っています。

現実的には、単純に忙しくて接種の時間が取れないこともあると思います。子育て中の身としては、医療的な必要性と日々の生活の中での現実との折り合いが接種を妨げているケースも少なくないと感じます。

また、インフルエンザと比較したとき、オミクロン以降のコロナではどうなんでしょう?感染力やICU管理が必要になるケースも考えると、インフルより怖い面もあるのでは?

いくつかのデータを見ても、インフルエンザの方が小児における重症合併症(特に脳症など)の頻度は高い傾向があります。ただCOVID-19でもMIS-Cや心筋炎などが起こることがあるので、軽視はできないと思っています。

私自身の臨床経験でも、インフルエンザ脳症で後遺症が残ったお子さんは複数経験していますが、COVID-19での重症化例は今のところ経験がなく、個人的にはインフルエンザの方が怖いと感じる部分もあります。

また、インフルは冬に流行するので接種時期が分かりやすいですが、COVID-19は流行時期が不規則になっていて、いつ打てばいいのか迷う家庭も多いです。

なるほど、確かにインフル脳症の脳症率は高いですね……。一方で、Long COVIDを考えると、新生児や乳幼児は別としても、学童以上ではコロナの方が後遺症の懸念が強いように思います。単純な比較は難しいところです。

「新型コロナワクチン、小児への接種をどう考える?」のまとめ

  • 小児でも新型コロナウイルスによる重症例(MIS-C、心筋炎など)が報告されており、接種には一定の意義があると全員が認識している。
  • 健康な子どもへの接種については意見が分かれ、家庭環境や社会的背景に配慮しながら、個別に判断すべきという意見が多い。
  • インフルエンザとの比較では、脳症など重症合併症の頻度はインフルエンザの方が高い一方で、Long COVIDや感染時期の不規則さなどコロナ特有の課題も挙がった。

HPVワクチン、わが子に打たせる?

——HPVワクチンの接種についてはいかがでしょうか?

私はもちろん、自分の子どもには迷わずHPVワクチンを接種させます。たとえ男児であっても、中咽頭がんや肛門がんの予防、そしてパートナーへの感染リスクを考えると、打たないという選択肢はないと思っています。診察の際、小学校高学年の女の子が来れば、可能な限りHPVワクチンの話をしています。ただし、まだ打たない選択をする親御さんも多く、話す機会をつくること自体が大切だと感じています。

私もまったく同意見です。HPVワクチンは明らかにメリットがリスクを上回っていると思います。最近は接種しない親御さんも減ってきたように感じますが、副反応に対する偏見を取り除くのはまだまだ大変です。

私も、子どもには必ず接種させたいと考えています。副作用に対する誤解は根深いものがありますが、長崎大学の森内先生をはじめ、多くの専門家が正しい情報を発信し続けてくれていますよね。

——臨床の現場で保護者の方の反応はいかがでしょうか?

一昔前は「友達が打っていないから」とか「周囲が打っていない」と言われて断られることが多く、医師の意見より周囲の雰囲気が優先されることに歯がゆさを感じていました。ただ最近は、患者さん側から希望されるケースも増えてきて、少しずつ変わってきたと感じます。

私は家庭医として、ワクチン接種の対象年齢に達した子どもが受診したときに、その機会を逃さないようにしています。その年齢は性教育にも関わる時期ですが、受診頻度が減ってくる年代でもあるので、例えば風邪などで来院した際に、タバコやお酒の話題と一緒にHPVワクチンの話もしています。

私も親御さんに説明するときは「男児にも一定の予防効果がある」「将来のパートナーを守る視点も大切」と伝えています。ただ、副反応への不安や「男の子に必要か?」という声も根強いので、強制はせず、あくまで情報提供としてお話するようにしています。タバコや飲酒の話と一緒にするのは参考になりますね。

私自身、3歳の息子がいるのですが、調べてみると「HPV=子宮頸がん予防」だけでなく、男児の中咽頭がんのリスクも取り上げられていて、そうした視点からも重要だと感じています。男児も定期接種の対象にすべきではないかと感じます。(参考1)

おっしゃるとおりです。例えばオーストラリアでは全男児が接種対象ですし、他の国でも積極的に進められています。HPVワクチンは、女性への感染を防ぐだけでなく、自分自身のがんリスクを減らすという意味でも重要です。実は私自身も接種しましたが、当時で5万円ほどかかりました。ですが、息子がいたら間違いなく接種させます。

アメリカ、フランス、ドイツなど多くの国で男児も定期接種になっていますよね。私も、迷わず接種させます。

「HPVワクチン、わが子に打たせる?」のまとめ

  • 全員がHPVワクチン接種に肯定的な立場であり、男女問わず自分の子どもに接種させたいと考えている。
  • 男児においても、中咽頭がんなどの予防効果がることから、接種の必要性が認識されている。
  • 医療現場では、副反応への偏見や周囲の影響から接種をためらう保護者への情報提供が重要であり、日常診療の中で意識的に説明している。

渡航ワクチンは子どもにも打たせる?それぞれの意見とは

——海外に行く際の渡航ワクチンは子どもにも接種させますか?

私自身、大学生の頃に旅行で渡航した際は、狂犬病などのワクチンのことが頭にはあっても実際には接種しないまま行くことも多かったです。ただ最近、発展途上国に行く機会があり、改めて狂犬病ワクチンを打ちました。高かったですが……。

小児ワクチンに関しては、渡航先によっても違うとは思いますが、例として、狂犬病・破傷風・髄膜炎菌・A型肝炎あたりでしょうか。皆様はいかがですか?

まず破傷風についてですが、四種混合ワクチンに含まれているから大丈夫かなと思っていました。でも、最終接種から10年以上経っている場合や、ケガのリスクが高い環境なら、ブースターを検討した方がいいと思います。

それから狂犬病。致死率がほぼ100%というのはやはり恐ろしいですね。頻度は低いと思っていましたが、結構多くの国で発生していることを知って(参考2)、特に発生リスクの高い国に行く場合は接種を考えるべきだなと感じました。

私の基本スタンスは「打てるものは打っておくべき」という考えです。欧米ならあまり気にしませんが、南アジアやアフリカに行くなら、A型肝炎、狂犬病、腸チフスは優先度が高いと思います。ただし、腸チフスは2歳以下には接種できないので注意が必要です。

——実際のところ狂犬病ワクチンは15,000円を3回といった形で高額です。リスクとベネフィットのバランスを検討した際に自分の子どもだったらどうしますか?

私自身は、通常の観光旅行なら接種しない判断をしそうです。先進国であれば特に。ただ、南アジアやアフリカ、東南アジアの一部であれば接種させると思います。

私も同じで、欧米では打たせないですが、南アジアやアフリカなら迷わず打たせます。

2020年にフィリピンで犬に咬まれて日本で狂犬病を発症して亡くなった方がいますね。やはり子どもが南アジアやアフリカ、東南アジアに行くときは接種させたいと思います。

——髄膜炎菌ワクチンはいかがでしょうか?

私は、「①流行地域への渡航」「②海外での集団生活」では推奨しますが、日本国内の集団生活で必要かどうかには少し疑問を持っています。

正直、髄膜炎菌ワクチンについてこれまであまり考えたことがなかったです。調べてみて、「①流行地域への渡航」「②海外の学生寮などでの集団生活」では必要だと思いました。ただ、日本国内の学校や寮でどの程度勧めるべきかは悩ましいですね。致死率が高いことは伝えつつ、最終的には保護者の判断になると思います。私自身は、自分の子どもが寮生活をするなら、知ってしまった今では接種させると思います。

私も1と2は打たせますが、日本だと必要性はあまり感じないですね。

おっしゃる通りで、あとは各家庭での判断になると思います。

髄膜炎菌ワクチンは患者さん側から話題に出ることはほとんどないので、こちらから推奨しない限り、検討される機会がないのが実情ですね。おおむね3人での考え方も近いように感じました。

「渡航ワクチンは子どもにも打たせる?それぞれの意見とは」のまとめ

  • 渡航ワクチンの必要性は渡航先と滞在内容によって大きく変わるため、一律の判断は難しいが、特に小児においては重症感染症のリスクを十分考慮すべきである。
  • 費用や年齢制限も加味しつつ、「自分の子どもだったら?」という視点でのリスク評価が有効である。
  • 髄膜炎菌など一部のワクチンは、情報提供とともに保護者の判断を促す形での意思決定が求められる。

座談会まとめ

小児ワクチンは重症化予防が目的で、疾患ごとに意義が異なる:
インフルエンザは変異に対応するため毎年の接種が推奨され、経鼻型の新しい選択肢も出てきている。新型コロナは小児の重症例もあるため接種に意義はあるが、健康児への必要性は意見が分かれる。HPVワクチンは全員が肯定的で、男女問わず接種を勧めたいという意見で一致した。

接種の判断は家庭の事情や地域医療体制も考慮が必要:
副反応や必要性への不安に対しては、重症化予防という本来の目的を説明することが重要。地域差や医療体制の制限もあり、家庭ごとの状況に応じた柔軟な対応が求められる。

「自分の子どもならどうするか」の視点が判断の軸になる:
渡航ワクチンのように一律の基準が設けにくい場合は、渡航先や内容に応じたリスク評価が必要。接種が話題に上がりにくいワクチンもあるため、医師からの情報提供が重要とされた。

AIMEDでは、このように読者の皆様から寄せられた質問に対して、医師3名が座談会を開き回答いたします。皆様もわからないこと、日頃から気になっていること、病院では聞きにくいことなどがございましたら、お気軽に質問をお寄せください。

1.日本耳鼻咽喉科学会「HPV関連中咽頭がんとHPVワクチン」資料

2.厚生労働省「狂犬病の発生状況」

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